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離婚時の財産分与で家を分けるには?方法や注意点について知っておこう

2024.06.17

離婚するときには財産分与が発生します。財産分与は預貯金や有価証券、自動車などだけでなく、不動産である家も対象になります。ただし、条件によっては必ずしも分与しなくて良い場合も。

この記事では、財産分与の3つの種類や家を財産分与する方法と注意点、離婚時の財産分与がスムーズに進まないときの対処法について解説します。

離婚で発生する財産分与とは?

財産分与とは、婚姻後に夫婦が協力して築いた共有財産を離婚に際して分けることです。民法にも、離婚の際には相手方に対し財産の分与を請求することができると規定されています。

財産分与はあくまで権利であり、義務ではありません。そのため、夫婦間の合意があれば財産分与なしで離婚はできます。財産分与を行わないことを「財産分与請求権の放棄」と呼んでいます。「財産分与請求権の放棄」は撤回できないため、慎重に選択しましょう。

また、財産分与の請求期限は離婚後2年以内です。ただし、お互いの合意があれば2年以上でも請求は可能です。

離婚時に発生する財産分与の3つの種類

離婚時の財産分与には、一般的に行われる清算的財産分与、夫婦のうち一方が専業主婦(主夫)であったときに多い扶養的財産分与、有責配偶者がいる場合に行う慰謝料的財産分与の3つがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.清算的財産分与

清算的財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた共有財産を名義に関わらず貢献度に応じて分配する方法です。貢献度は収入の額だけで判断されるわけではなく、家事労働も加味されます。そのため、専業主婦(主夫)であっても財産分与を受けられます。

財産分与の請求には、離婚原因は影響しません。たとえ離婚原因を作った有責配偶者であっても、財産分与請求ができます。

2.扶養的財産分与

扶養的財産分与とは、離婚後に夫婦のうち一方が経済的に困窮すると見込まれる場合に、生計を補助する目的で行われる財産分与です。

例えば、専業主婦(主夫)である、持病がある、高齢であるなどの場合が考えられます。

離婚時に夫婦で話し合いを行い、経済的に余裕のある立場の配偶者が経済的に弱い立場の配偶者に定期的に一定額を支払うのが一般的です。

3.慰謝料的財産分与

慰謝料的財産分与とは、不貞行為やDVなど離婚原因を作った有責配偶者が慰謝料の意味を込めて行う財産分与のことです。

本来、性質の異なる慰謝料と財産分与は別に算定します。しかしどちらも金銭のやりとりになるので、まとめて請求・支払いが可能です。その場合、心理的苦痛に対する相当の金額が財産分与で支払われていると考えるため、重ねて慰謝料請求はできません。

財産分与は離婚成立から2年以内に請求する必要がありますが、慰謝料の場合は離婚後3年まで請求できます。請求期限の違いにも注意しましょう。

家などの不動産も財産分与の対象となる

夫婦で婚姻期間に築いたすべての財産は、離婚時の財産分与の対象です。これは不動産である家なども含みます。ただし親から相続したり、独身時代のお金で購入したりした財産の場合は分与の対象外です。

<財産分与の対象になる財産一例>
・現金、預貯金
・積立型生命保険
・株や国債などの有価証券
・土地や家などの不動産
・自動車
・貴金属や美術品
・年金
・退職金 など

<財産分与の対象外の財産一例>
・独身時代の貯金
・持参した家財道具
・片方の親から相続した遺産
・別居後に築いた財産 など

離婚時に家を財産分与する方法

家は不動産のため、物理的に分割することは困難です。一般的に家を財産分与するときには、売却して金銭に変えてから分ける方法と家に住み続ける方が相手に金銭を支払う方法とが主流です。家の財産分与の方法を紹介します。

売却して現金を分ける

1つ目は、家を売却して現金化して分ける方法です。この方法はわかりやすく、金額がはっきりしているのでトラブルに発展しにくいメリットがあります。現金は新生活の資金にもなるでしょう。

離婚時に家を売却するなら、不動産会社に依頼するのが一般的です。ただし、住宅ローンが残っている場合は注意が必要。住宅ローンが売却額を下回った場合を「アンダーローン」、住宅ローンが売却額を上回った場合「オーバーローン」と呼びます。

アンダーローンの場合は、住宅ローンを返済したあとに残った金額をふたりで分けます。オーバーローンの場合は残債を自己資金で完済するか、任意売却することが多いようです。

任意売却とは、債権者の同意を得て住宅ローンの残債があっても不動産を売却できる方法です。任意売却であればローン完済していなくても設定されている抵当権を解除でき、売却可能になります。

ただし任意売却は金融事故として扱われて信用情報に履歴が残るリスクがあります。そのため、任意売却の選択は慎重な判断のもと行う必要があるでしょう。

片方が住んで評価額の半分の金額を渡す

離婚後にどちらかが家に住み続ける場合には、家を出る方の配偶者に対して家の評価額の半分の金額を支払う方法もあります。

家の評価額は、固定資産税の通知書を確認するか、不動産鑑定士に依頼して調査してもらうのが一般的です。

離婚時に家を財産分与するときの注意点

家を財産分与する場合、事情によってはトラブルが発生したり、スムーズに分与が行えなかったりすることも。家を財産分与するときに注意したいポイントを押さえておきましょう。

片方が住み続ける場合は住宅ローンがあるとトラブルになる

家の財産分与の際に住宅ローンが残っていると、支払いが滞ってトラブルになることがあります。また、共同名義であれば片方が家を出るのは金融機関との関係で契約違反になります。詳しく見ていきましょう。

債務者が家に住み続けた場合
住宅ローンの契約名義人が家に住み続ける場合、支払いが滞ったら連帯保証人に支払い請求が届きます。元配偶者やその親族が連帯保証人になっている場合はトラブルになってしまう可能性があるため、名義変更をおすすめします。

債務者でない人が家に住み続けた場合
住宅ローンの名義人でない方が残り、家に住み続ける場合も。このときにもし債務者の住宅ローンの返済が滞ってしまうと、金融機関が裁判所に差押えの申し出を行った結果、強制的に立ち退きを迫られることがあります。

万が一、相手方の住宅ローンの返済が滞った場合に備えて、離婚時には住宅ローンに関する条件を公正証書に記しておくと良いでしょう。

夫婦で共有名義の場合
共働きの家庭で多いのが、夫婦共有名義で家を購入している場合です。この場合、離婚したからといって片方が家を出ていくのは契約違反になるので注意しましょう。

基本的に住宅ローン返済中の名義変更は認められていません。そのため、一方の単独名義に変更したいなら、住宅ローンの借り直しが必要です。

離婚時の財産分与はスムーズに進まない場合もある

離婚時の財産分与は、スムーズに進むとは限りません。そもそも仲たがいをしていることが多くお互いに納得できずに、話し合いが難航する場合も多いようです。

その場合は、離婚前であれば「離婚調停」、離婚後であれば「財産分与請求調停」を家庭裁判所に申し立てできます。調停をスムーズに進めるには、離婚時の財産分与に詳しい弁護士に依頼すると良いでしょう。

離婚時の家の財産分与はトラブルを防ごう

離婚時の財産分与には不動産である家も含まれます。簡単に分割できないため、家の財産分与はトラブルの原因になることも少なくありません。家の財産分与の際の注意点を意識しながら、滞りなく財産分与ができるように手続きを進めましょう。

トラブルが予想されるときには、専門家に相談するのも良い方法です。

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監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一 弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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