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不動産の引き渡し猶予とは?特約付きのリスクや期間について解説

2024.10.24

引き渡し猶予とは、家を売却してから、家を引き渡すまで猶予をもらう取り決めのことです。引き渡し猶予特約が必要なケースの多くは、売却先行で家を住み替える場合です。ここでは、引き渡し猶予期間や特約を付けるリスク、注意点について詳しく説明します。

不動産の引き渡し猶予とは

不動産における引き渡し猶予の説明や、引き渡し猶予期間、引き渡し猶予特約の文言を紹介します。以下で確認しましょう。

引き渡し猶予とは決済後引き渡しを待ってもらうこと

引き渡し猶予とは、家を売却し代金を受け取ってから、家を引き渡すまで待ってもらう特約のことです。

本来ならば家の引き渡しは、売却代金決済後すぐに行わなければならないもの。しかし売主に事情がありすぐに家を引き渡せない場合、交渉によっては引き渡し日の延期をお願いすることができます。その際に契約書に盛り込む取り決めが、引き渡し猶予です。

猶予期間は1週間前後が一般的

引き渡し猶予の期間は、一般的には1週間前後で設定されることが多いです。具体的には3~10日を目安に考えるとよいでしょう。

猶予期間の長さに法的なさだめはないため、売主・買主の間で合意が得られれば自由に設定できます。しかし、猶予はあくまでも買主の厚意で設定してもらえるものであり、猶予期間中は賃料が発生するわけではありません。猶予期間が長ければ長いほど、買主側のリスクが増大していきます。

そのため、2ヶ月や半年などの長期間は、交渉が難しいことに留意しておきましょう。

引き渡し猶予特約の具体例

引き渡し猶予をつける場合、契約書に以下のような特約を盛り込みます。

  • ・売買代金の残金支払い日から物件引き渡し日までの猶予期間
  • ・猶予期間中は、売主が物件の管理責任を負うこと
  • ・猶予期間中、天災地変等の不可抗力により、本物件の全部又は一部が滅失もしくは毀損した場合、その損失の賠償は売主が負担し処理すること
  • ・税金や負担金などの清算は引き渡し日で精算し、引き渡し日が変更された場合は再精算を行わないこと

不動産で引き渡し猶予を付けるケース

不動産で引き渡し猶予をつける場合は、売却先行に限ります。住宅ローンの残債がある場合、売却先行を選ぶケースが多くあります。以下で詳しく説明します。

引き出し猶予を付けるのは売却先行の場合のみ

引き出し猶予が必要なのは、家の住み替えを売却先行で行う場合です。

家を売却して新居に住み替える際、2つの方法があります。1つは、自宅を売却する前に転居先を購入する「購入先行」。そしてもう1つは、自宅を売却してから転居先を購入する「売却先行」です。

売却先行の場合、自宅を売却してから新居を確保し、引っ越す必要があります。そのため、売却金の決済から引き渡しまでに猶予が必要なのです。反対に、新居を購入してから家を売却する購入先行の場合は、先に転居先を確保しているので猶予をもらう必要がありません。

売却先行となるのは売主の住宅ローンの残債がある場合が多い

売却先行を選択する多くのケースは、売却する物件に住宅ローンが残っているケースです。

売却する家にローンが残っていると、家に設定された抵当権を抹消できません。抵当権を抹消しないと所有権を買主に移せないため、先に家を売却し、得た資金で家のローンを完済する必要があります。新居の住宅ローンはその後に組み、引っ越す流れになるため、引き渡しまでに猶予が必要になるのです。

住宅ローンが残っているケース以外で売却先行を選択するのは、新居購入に売却資金を充てたい場合や、納得するまで売却活動を行いたい場合が挙げられます。

不動産の引き渡し猶予を設定する場合の流れ

ここでは、引き渡し猶予をつけ、仲介で不動産の売却をする場合の流れについて説明します。基本的には、以下のスケジュールで進めます。

  1. ①不動産会社と媒介契約を締結する
  2. ②引き渡し猶予特約を付けて売却活動を行う
  3. ③特約付きの売買契約を締結する
  4. ④買主が売却物件の代金決済を行う
  5. ⑤売却代金で転居先の物件の代金決済を行う
  6. ⑥転居先に引っ越す
  7. ⑦売却物件を買主に引き渡す

一般的な不動産売却と異なるのは、特約があることを明示して売却活動を行う必要がある点です。「引き渡し猶予とは」の章で触れたように、引き渡し猶予は購入希望者にとって不利な内容です。引き渡し猶予期間を設定することも含めて購入を検討してもらう必要があるため、売却活動時点で明示しなくてはならないのです。

不動産会社への査定依頼の時点で、引き渡し猶予特約を付けたいことを伝えておくようにしましょう。

一般的な不動産売却の流れは、以下の記事も参考にしてください。
不動産売却のスケジュールと期間|具体的な流れや短くするコツも解説

不動産の引き渡し猶予はリスクあり!特約設定時の注意点

不動産の引き渡し猶予には、2つのリスクがあります。「売れにくくなる」「値下げを要求されることがある」について詳しく説明します。

売れにくくなる

引き渡し猶予付きの物件は、売れにくいことがデメリットです。前述の通り、引き渡し猶予特約は買主にとっては大きなリスクがあるためです。

買主からすると、家の売買代金を支払ってもすぐに引っ越すことができないばかりか、売主を無償で家に住まわせなければなりません。また、猶予期間を過ぎても売主が家を引き渡してくれず、居座るリスクも抱える必要もあります。

このような負担を考えると、引き渡し猶予を受諾するメリットが買主側にはないため、売れにくいのです。

値下げを要求されることがある

引き渡し猶予をつけると、値下げ交渉をされることがあります。引き渡し猶予付きの物件は、買主にとって前述のようなデメリットがあるためです。

どうしても希望価格で売却したい場合は、引き渡し猶予を付けるかどうかをよく検討するべきでしょう。

不動産の引き渡し猶予をつける前に検討すべきポイント

不動産の引き渡し猶予をつけることを考えているなら、考慮すべきポイントが3つあります。「仮住まいへの転居」「リースバック」「信頼できる不動産会社への依頼」について、以下で詳しく説明します。

一時的に仮住まいへの転居も検討する

引き渡し猶予をつけることを避けたい場合は、賃貸マンションや実家などに一時的に転居するのも1つの方法です。売却する家からの引っ越し先が新居以外であれば、売却先行でもすぐに住み替えられます。

ただし仮住まいと新居、2回の引っ越しが必要になります。直接新居に引っ越す場合と比べると、手間や費用が2倍かかることになるためそれも含めて検討しましょう。

リースバックも検討する

引き渡し猶予をつけたくないが、仮住まいへの引っ越しもしたくない場合、リースバックという手段があります。

リースバックとは、売却した家に賃貸契約で住む方法です。家を売却した後、所有者となった買主と賃貸契約を結びます。家賃を支払って同じ家に住み続ける形になるため、あわてて引っ越す必要もなければ引き渡し猶予をつける必要もありません。

売却してから引っ越すまで、2ヶ月や半年など長期間住み続けたい人にもおすすめです。ただし、仲介で売却するより売却代金が安くなるなどデメリットもあります。それも踏まえて判断しましょう。

リースバックのメリット、デメリットについては以下の記事も参考にしてください。
リースバックやリバースモーゲージは高リスク?違いやメリット・デメリットについて解説

信頼できる不動産会社に依頼する

デメリットも見据えた上で引き渡し猶予を付けることにするなら、信頼できる不動産会社に依頼するのが大切です。

「不動産の引き渡し猶予はリスクあり!特約設定時の注意点」で説明したとおり、引き渡し猶予付きで売却する場合、売れにくくなるなどのデメリットがあります。それでも満足のいく売却活動をしたいなら、経験豊富な不動産会社を選ぶことが肝となります。

きちんとした説明をしてくれる、売却のノウハウがあるなど、信頼できる不動産会社を探し、契約しましょう。

住栄都市サービスは創業30年の実績があり、半年~1年間といった長期の引き渡し猶予にも対応可能。信頼できる不動産会社を探しているなら、ぜひ一度ご相談ください。

引き出し猶予をつけるなら不動産会社にしっかり相談しよう

不動産における引き渡し猶予は、売買決済から家を引き渡すまでに猶予をもらうことです。引き渡し猶予が必要なのは、売却先行で家を住み替える場合であり、その多くが住宅ローンの残債があるケースです。

ただし、引き渡し猶予をつけるのは売主買主ともにリスクがあります。経験豊富な不動産会社に相談し、どのような判断が最適か検討しましょう。

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監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一 弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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