大きなお金が動く不動産売却は、詐欺の対象になりやすい取引です。いざというときに詐欺にあわないために、不動産売却詐欺の手口や事例を知り、対策をしておきましょう。
この記事では、不動産売却詐欺の手口や対策法について解説します。万が一詐欺被害にあったときの相談窓口についても紹介していますので、チェックしてください。
不動産売却詐欺の手口とは
不動産売却詐欺にあわないためには、どんな手口があるのか知っておくことが大切です。過去にあった不動産売却詐欺の手口を紹介します。
相場の価格と乖離した査定額を提示する
不動産会社に売却の相談をすると、相場に合わない査定金額を提示されることがあります。
相場より極端に安い金額を提示される場合はもちろん、あえて高額の査定額を提示して契約を促すことも。不動産を適正な価格で売るために、相場を知っておくことが大切です。
相場より大幅に安い査定額を提示する場合
不動産査定を依頼すると、相場より極端に安い金額を提示される場合があります。これは、できるだけ安く買い取って高く売ることで自社の利益を上げるためです。
または、買主が不動産会社の従業員の親族や友人、会社関係者の場合などの場合に、できるだけ安く売るために低い査定額を出される場合があるようです。
相場より大幅に高い査定額を提示する場合
相場より極端に高い査定額を提示するのは、媒介契約を促すためです。高い査定額につられて契約しても、その価格で売れるとは限りません。
なかなか買主が見つからないからと価格を下げるよう促され、結果的に売買契約の時点で相場より低い価格で取引せざるを得ないこともあります。
こういった場合、査定書に但し書きとして、条件によっては価格が下がる旨記載されていることが多いようです。契約をする前に但書きも確認して、価格が下がる条件を明確にしておきましょう。
不要な手数料を要求する
不動産売却時にかかる手数料には、さまざまなものがあります。悪徳不動産会社の中には手数料をうたって、本来不要な費用を要求することがあります。買取ではなく仲介契約を結ぶ場合に、仲介手数料を法令で定める上限以上に要求する、本来不要な手数料を要求することも。
不要な手数料を要求する不動産売却詐欺について見ていきましょう。
上限以上の仲介手数料を請求する場合
不動産会社に支払う手数料として代表的なものは、仲介手数料があります。仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限が決められています。仲介手数料の上限は、以下の通りです。
<仲介手数料の上限>
売買価格が400万円を超える場合:(売買価格×3%+6万円)+消費税
※ただし、売買金額が800万円以下の物件の場合には「低廉な空家等の媒介特例」が適用され、一律30万円+消費税が仲介手数料の上限
もし、これ以上の仲介手数料を請求されたら違法と考えてください。
本来必要のない手数料を要求する場合
その他にも、本来不要な手数料を請求する悪徳不動産会社もあります。
例えば、広告費。売主が要望していないのにもかかわらず、広告費を請求するのは違法です。
本来、物件の広告は不動産会社が営業努力として行うものであるため、売主に請求するのは間違いです。その他、売主の要求していない土地の整地費用や、買主が遠隔地だからという理由で交通費などの請求をしてくる不動産会社もあります。
測量費を要求する場合
土地によっては、測量費が別途にかかるケースがあります。これは、不動産の価値を正しく測定する目的で測量を行うための費用ですが、詐欺の手口に使われることがあります。
例えば、法外な測量費の請求をする場合です。測量費は、実際に調査を行う土地家屋調査士などに支払う費用であるため、仲介手数料の規制外となり、高額請求につながりやすくなります。
悪徳不動産会社の中には土地家屋調査士と結託して不当に測量費などを徴収する場合もあるため、注意してください。
また、本来は測量後に払う測量費を事前に要求する場合にも注意が必要です。事前に費用を振り込ませてそのまま連絡が取れなくなる事例もありました。
不動産登記を無断で書き換える
悪質な不動産会社は、売主に売却代金を支払う前に勝手に不動産登記を変更することがあります。
一般的に不動産売却では、代金を受け取ると同時に不動産登記の名義変更を行います。したがって登記識別情報などの重要な書類は、代金受領の際に買主に渡しますが、順序が逆になってしまうと勝手に登記変更をされてしまい、代金を支払ってもらえないというケースも。
当該不動産が自分に所有権があると主張するためには、登記が必要であるため、勝手に名義変更された後で元の所有者が不動産を取り戻すのは非常に困難です。場合によっては泣き寝入りになることもあります。十分注意しましょう。
使えない小切手で支払いを行う
不動産売却時に支払いを小切手で行いたいといわれたら要注意です。小切手そのものに問題はありません。以前は、大金が動く不動産取引で現金を持ち運ばなくて良いため頻繁に使われていた決済方法です。
しかし現在は、銀行振り込みで簡単に大金を動かせます。そのためわざわざ小切手を使うというのは怪しいため、取引しない方が賢明です。
小切手の現金化ができず、売却代金を受け取れない詐欺の可能性があります。
囲い込みを行う
悪徳不動産会社は他社との比較を嫌がる傾向にあります。他社に査定依頼をして比較されないよう、囲い込みを行うことも。
囲い込みを防ぐためにも、最初に複数の不動産会社に同時に査定依頼すると良いでしょう。その他、自社の顧客に売却したいがために他不動産会社からの問い合わせに対応しないこともあり、売るタイミングを逃して価格を下げざるを得なくなることもあります。
売却の際に新しい不動産を買わせる
売却と同時に新しい不動産を買わせるという詐欺もあります。これは、原野商法と呼ばれる詐欺で、過去に流行ったものですが、最近また増えているといわれています。
原野商法は、ほとんど価値のない原野や山林などの土地を「将来価格が高騰する」など、嘘の情報を教えて購入させる詐欺です。バブルの頃に流行しましたが、実際には土地の価格が上がることはなく利用価値のない土地だけが残った人も多かったようです。
売却のタイミングで新しい不動産購入を進めてくる業者は、疑った方が良いでしょう。不動産の購入時は、本当に価値があるかどうか見極める必要があります。
不動産売却詐欺にあわないためにやっておくべき対策7選
不動産売却詐欺にあわないために、事前に対策をしておきましょう。詐欺を回避する7つの方法を解説します。
不動産の相場価格を正しく把握する
不動産を売却しようと思ったら、まずは自分で相場価格を調べて相場を知ることが大切です。
近隣の似た条件の物件価格を調べる、不動産情報誌を調べるなど、いくつかの情報源を利用して相場を調べてみましょう。複数の見積もりが一度に取れる一括査定サイトを利用するのもおすすめです。
事前に相場を知っておかないと、提示された価格に疑問を持てず、不当に低い査定額や過大な査定額を提示されても気づけないかもしれません。相場以外にも、必要な手数料の計算方法や上限を計算しておくことも大切です。
国土交通省検索システムを確認する
国土交通省のネガティブ情報等検索サイトを活用する方法も覚えておきましょう。
ネガティブ情報等検索サイトを使うと、行政処分を受けたことのある不動産会社がわかります。事業者名はもちろん、行政処分を受けた年月日や宅地建物取引業者免許番号、処分の種類や違反行為の概要が見られる仕様です。
不動産会社を検索してヒットした不動産会社は、過去にトラブルを起こしているため避けた方が無難です。
宅地建物取引業の免許の有無を確認をする
不動産売却を行うには、宅地建物取引業の免許が必要です。不動産会社がこの免許を受けているかどうかは、国土交通省の宅地建物取引業者の検索システムで確認できます。
システムで不動産会社の名前を検索して、免許証番号が表示されれば免許があるということです。ただし、注目して欲しいのは免許の有無だけではありません。
免許証番号は「国土交通大臣(1)第〇〇〇〇〇号」のように記載されますが、( )内の数字に着目してください。宅建業免許の有効期限は5年間であるため定期的な更新が必要で、( )の中の数字は免許の更新回数を示します。
つまりこの数字が大きければ、業界歴が長いということです。反対にこの数字が小さい場合は、詐欺を働くたびに何度も会社を作り直している悪徳業者の可能性があるため注意しましょう。
不動産売却のプロセスを理解しておく
不動産売却の流れを把握しておくと、取引の違和感に気づきやすく詐欺対策になります。
不動産売却の流れは以下の通りです。
<仲介の場合>
- ①不動産会社と媒介契約の締結
- ②売却活動の開始
- ③買主の発見・価格交渉
- ④買主と売買契約を締結
- ⑤代金の決済・登記・物件の引き渡し
<買取の場合>
- ①査定を行う
- ②売買契約を結ぶ
- ③代金の受取と同時に引き渡し
仲介であっても買取であっても、不動産取引は物件の名義変更と代金の支払いは同時に行うのが原則です。代金の受取前に名義変更に必要な重要書類の引き渡しは避けることが詐欺対策になります。
不動産会社を最初から一社に絞らない
不動産売却時に不動産会社を最初から一社のみに絞るのは危険です。取引したい不動産会社を見つけても他の業者ともつながっておくことで、万が一怪しいかもと感じたときに他の会社に切り替えられます。
不動産会社の口コミ情報を検索する
不動産売却時、契約をする前には、取引予定の不動産会社の口コミ情報を確認しておくことをおすすめします。
インターネットで口コミを検索しますが、口コミだけを当てにしないようにします。あくまで口コミは参考程度にとどめて、社歴や会社規模もチェックをしておきましょう。
悪質な不動産会社の行動パターンを知っておく
悪質な不動産会社の行動パターンを知っておくと、詐欺に気づきやすくなります。
例えば、既に取引が終了している物件を店頭やインターネットで広告するおとり広告を行っていたり、契約を必要以上にせかしてきたりしたら怪しいと考えてください。
アポなしの訪問やしつこい電話営業にも気を付けましょう。毅然とした態度で断ることが大切です。
売却代金の受取方法を確認する
先述の通り、不動産売却詐欺では使えない小切手が使用されることがあります。小切手には不渡りのリスクがあるので、できるだけ銀行取引または現金取引可能な業者を選んでください。
どうしても小切手で受け取るときには、すぐに現金化しても良いか確認を。現金取引を行うなら、銀行に相談して銀行内で取引スペースを貸してもらうのが良いでしょう。
不動産売却詐欺にあってしまったときの相談先
注意していても、実際に不動産売却詐欺にあってしまったらどこへ相談すれば良いのでしょうか。相談先になるのは、消費生活センター・国民生活センター、宅地建物取引業協会、弁護士・司法書士、法テラス、警察などです。詳しく見ていきましょう。
消費生活センター・国民生活センター
不動産売買において、もしかしたら詐欺かもしれないと感じたら、まずは消費生活センターに相談を。消費生活センターは、消費者トラブル全般に関する相談を受け付けているところです。
全国の都道府県・市町村に約850か所あり、国家資格を持った消費生活相談員等が法律に基づいて解決のためのアドバイスをしてくれます。全国共通ダイヤル「188」を使ってアクセス可能です。
消費生活センターがつながらないときは、国民生活センターにつながります。国民生活センターは、消費者庁が所轄する独立行政法人で、消費生活センターと連携しています。
国民生活センターの公式サイトには、詐欺に対する注意喚起も掲載されています。どちらも不動産売却詐欺に対応可能なので、まずは相談してみましょう。
宅地建物取引業協会
取引している不動産会社に疑問がある場合は、宅地建物取引業協会に相談できます。宅地建物取引業協会は、都道府県にある不動産会社が所属する団体です。
もし複数の都道府県で事業を展開する不動産会社であれば、国土交通大臣の免許を持っているため、該当地区の免許行政庁への相談が良いでしょう。免許行政庁では、不正な業務行為に関する苦情や相談を扱っています。どちらも相談は無料です。
警察
不動産売却において詐欺の疑いがある場合は、警察にも相談しましょう。警察には、詐欺被害専門の電話相談窓口が用意されていて、まだ詐欺と確定していないけれど詐欺が疑われる場合でも相談が可能です。
番号は「#9110」、全国からかけられます。
既に損害が生じていたり、脅迫や暴力が伴う場合は、速やかに警察に連絡して告訴状の提出を検討します。刑事事件扱いになれば、告訴状が受理された段階で警察は捜査を開始します。詐欺の被害が疑われる場合は、早めに相談してください。
弁護士・司法書士
明らかに不動産詐欺にあったと考えられるなら、弁護士や司法書士に相談するのが良いでしょう。できるだけ早く相談することで、対処しやすくなります。
その場合、不動産売却詐欺に詳しい弁護士や司法書士に依頼することが大切です。不動産取引は複雑に法律が絡んでいることが多く、専門外の弁護士では対応難しい場合もあります。不動産・詐欺に強い弁護士や司法書士を選びましょう。
法テラス
自分で弁護士を探して依頼するのが難しい場合は、法テラス(日本司法支援センター)を利用する方法もあります。
法テラスは、法務省管轄の公的法人で民事・刑事の区別なく法律相談できる窓口です。相談の内容に応じて、適切な法制度や弁護士、司法書士などの紹介をしてくれます。相談は無料です。
ただし、法テラスで司法判断や具体的な解決方法のアドバイスがもらえるわけではなく、あくまで窓口になる点に注意が必要です。
また、法テラスは条件が合えば弁護士や司法書士に依頼する必要がある場合に着手金や報酬金など費用の建て替えもしてくれます。建て替えの条件には、収入制限や民事法律扶助の趣旨に適することなどがあります。
無料で気軽に利用できるものの、法テラスには多くの相談が寄せられているため、対応まで時間がかかることが多いようです。
不動産売却詐欺にあわないためには、信頼できない不動産会社に依頼をするのは避けるのが無難です。不動産売却を検討しているなら、新築戸建から空き家まで売却実績豊富な住栄都市サービスに一度ご相談ください。
不動産売却詐欺にあわないためには事前対策を万全に
不動産売却詐欺の手口には、相場より安い価格で売却させることから勝手に名義変更をして不動産を不正に詐取する方法などさまざまなものがあります。
詐欺被害にあわないためには、相場や売買取引のプロセスを理解しておくことが大切です。少しでも違和感があったら取引をいったんやめて、疑問点をきちんと解決すべきです。
万が一のときの相談窓口を知った上で、安心して不動産を売却しましょう。
不動産所有や不動産売却についてのご不安などお聞かせください!
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。