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事故物件の定義とは?ガイドラインによる告知義務についても確認

2024.01.07

事故物件とは、「自然死や不慮の事故死以外の死」や「特殊清掃が必要になる死」に関連する物件であるとガイドラインでは定義されています。

ガイドラインでは、告知義務のある事項・対象・期間が定められていて、不動産業者はそれに則って契約を進めなければなりません。

一方で、事故物件かどうかわからなくなっている場合もあるため注意が必要です。

事故物件に関するガイドラインによる定義

令和3年10月に国土交通省が制定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によると、事故物件の定義はされていませんが、人の死の告知について以下のように記されています。

※①以外の死が発生している場合又は①の死が発生して特殊清掃等が行われた場合、いつまでその事実の存在を告げるべきかについては、その事件性、周知性、社会に与えた影響等により変化するものと考えられるが、賃貸借取引については、過去の裁判例等を踏まえ、賃貸借取引の対象不動産において①以外の死が発生している場合又は①の死が発生して特殊清掃等が行われた場合には、特段の事情がない限り、これを認識している宅地建物取引業者が媒介を行う際には、①以外の死が発生又は特殊清掃等が行われることとなった①の死が発覚してから概ね3年間を経過した後は、原則として、借主に対してこれを告げなくてもよい。
※①=自然死や不慮の事故死

つまり「自然死や不慮の事故死以外の死」や「特殊清掃が必要になる死」は、状況による場合はありますが、発生から概ね3年以内は告知義務のある物件ということです。

ガイドラインが制定される前は、事故物件の定義が曖昧で、取り扱う不動産業者によって物件が人の死に関わることを告知するかどうかの判断に相違がありました。

ここからはガイドラインで定義されている内容を詳しく解説していきます。

自然死や不慮の事故死以外の場合

自然死や不慮の事故死以外とは、自殺や他殺などの人為的な死を指し、事故物件と判断されます。

老衰や病死などの自然死や、階段や浴室での転倒や高齢者の誤嚥(ごえん)などの不慮の事故死は事故物件には該当しません。

ガイドラインによると、自宅での死因は老衰や病死などの自然死が9割を占めていると記されているため、一般的な死因であることがわかります。また、不慮の事故による死も日常生活のなかで起こることが予想できる事例です。これらの死は、買主・貸主の判断をゆるがす要因にはなりがたいと考えられます。

特殊清掃が必要になった場合

自然死や不慮の事故による死であっても、特殊清掃が必要になった場合は事故物件とみなされます。特殊清掃が必要な場合は一般的なハウスクリーニングでは落ちない体液や血液などのシミができていたり、耐えられないほどの悪臭がしたりするときだからです。孤独死の多くの場合は発見までに時間がかかり、遺体の腐敗が進行していることがほとんどです。

このような場合、賃貸入居者や不動産購入者に「契約したくない」とネガティブな感情が生まれることもあります。つまり意思決定が負の感情により左右されるため、特殊清掃が必要になると事故物件に見なされるのです。

「心理的瑕疵(かし)」がともなう物件

心理的瑕疵とは、賃貸入居者や不動産購入者が心理的に嫌悪感を抱くネガティブな事象のことです。気に入った物件でもその事象があれば、契約を見合わせることもあるでしょう。例えば、他殺や自殺の事件現場だった場合は心理的瑕疵に該当します。

心理的瑕疵は、不動産取引において入居や売買の意思決定を左右させうる要素の一つなのです。

ガイドラインによる事故物件の告知義務

前述の通り宅地建物取引業法にて、事故物件である事案についてはガイドラインにて告知義務が定められています。そのため不動産取引の仲介業者は瑕疵の有無や内容を重要事項説明書に記載し、契約者に説明しなければなりません。

入居者確保が困難になるなどの理由で「物件の瑕疵」を故意に伝えないのは違法行為です。告知すべき事項や対象、期間について詳しく解説します。

告知事項

告知が求められる事項は、次のような場合です。

・過去に人の死に関わることが起き、買主の物件購入や貸主の賃貸の意思決定に影響を与える可能性があるとき

・人の死に関わる事案が他殺・自殺・不慮の事故による死や自然死で特殊清掃が行われた場合など、買主や貸主が不安や懸念を抱く可能性が高いとき

告知事項には亡くなった方や遺族のプライバシーに関わる情報は記載されません。氏名・年齢・住所・家族構成・死因などは伏せられるため、安心してくださいね。

告知対象

告知の対象になるものは以下のように定められています。

  • ・生活の本拠となる部屋
  • ・ベランダ・バルコニー・テラスなど専用使用できるスペース
  • ・日常的に使用する玄関ホール・廊下・階段・エレベーターなどの共有スペース

一方で、以下のような場所は告知対象外です。

  • ・別の階や部屋で起きた事案
  • ・居住するうえで通常使用しない設備室や非常階段などの共有スペース

ただし、事件性が高かったり、社会的に大きな影響を与えたりして多くの人に周知されている事案は、告知対象にかかわらず告知する義務があります。

告知期間

告知期間は、賃貸物件と売買取引の場合で異なります。まず、賃貸の告知期間はおおよそ3年間と定められています。特殊清掃が行われた場合は、清掃が行われてからではなく、死が発覚してから3年間とします。一方で、売買取引の告知期間は定められていません。

なお、貸主や借主から問い合わせがあった場合には、不動産会社は期間に関わらず告知をする必要があります。

事故物件かわからなくなっていることもある

物件の過去の状態が把握できなくなっている場合、事故物件かわからなくなってしまうケースがあります。以下のような場合は、情報が通達されないまま事故物件を契約してしまう恐れがあるので注意が必要です。

  • ・オーナーが不動産会社に情報を伏せて売却した場合
  • ・オーナーや仲介業者が変更になり、引き継ぎや申し送りがしっかりされていない場合

事故物件かどうかを知らずに契約してしまうリスクを回避するためには、新築時からオーナーや仲介業者が変更していない物件を選ぶと安心です。

事故物件の見分け方4つ

不動産業者の告知義務がガイドラインで制定されたとはいえ、初めて会う担当者であれば信用できるか不安になることもあるでしょう。そんなときに自分でも事故物件を見分けられると安心ですよね。

そこで事故物件の見分け方を4つ解説します。

1.「瑕疵あり」「告知事項あり」などの記載を確認

物件情報の備考欄に「瑕疵あり」「告知事項あり」と記載されている場合は、事故物件の可能性があります。一般的には、先述の心理的瑕疵や物理的瑕疵、環境的瑕疵の場合がほとんどです。

物理的瑕疵とは、建物の傾きや地盤の歪みにより耐震強度に問題があるなど、建物の欠陥がみられることです。環境的瑕疵とは、墓地や火葬場、暴力団の事務所や風俗店などの嫌悪感のある施設が周囲にあったり、騒音が聞こえたりする場合です。

通常、瑕疵の内容までは記載されていないため、気になる物件に「瑕疵あり」「告知事項あり」の記載があった場合は事前に確認しておくと安心ですよ。

2.相場より家賃が極端に安くないか確認

事故物件の家賃は、相場の2割〜3割程度安くする場合があるため、家賃が極端に安い物件には注意が必要です。念のため、事故物件ではないか不動産担当者に確認しましょう。

また、駅から近い、眺めがいいなどの好条件なのに入居者が少ない物件も注意が必要です。一般的には、好条件な物件はすぐに入居者が決まるものです。好条件なのに空室が多い場合は事故物件の可能性があります。事前に確認しておくと安心できますよ。

3.修繕が不自然でないか確認

部屋の一部だけ不自然に修繕されている箇所がないかどうか、確認してみてください。例えば、フローリングの一部だけ明らかに他の箇所と素材が異なる場合は、修繕していることが明らかです。修繕理由などを確認してみましょう。

また、メディアに取り上げられるような事件のあった物件は、事故物件サイトで物件情報を確認できる場合があります。しかし、事故物件であることを隠蔽するために外装や物件名なども変更されている可能性もあります。

いずれにしても不自然な点や気になることが少しでもある場合は、事前に不動産業者に確認しておきましょう。

4.過去の入居者情報に不自然なところがないか確認

過去の入居者情報を売主や貸主に確認するよう、不動産業者に依頼するのも一つの方法です。先述の通りプライバシーに関わる情報は伏せられますが、居住期間や転居理由、年齢や性別などその人がもつ特徴やプロフィールなど可能な範囲で教えてもらえることがあります。

また、空室期間が長い場合はその理由を確認してみると、入居の判断材料を得られる可能性もあるでしょう。

事故物件の定義を知って後悔のない取引をしよう

事故物件の定義は、「自殺や他殺などによる死」と「特殊清掃が必要になる死」に関わる心理的瑕疵が伴う物件です。不動産業者には契約者に対し告知が義務づけられていますが、自然死や不慮の事故による死は告知の範囲外です。

また告知義務には、事項や対象、期間が定められています。事故物件の定義を理解するにはガイドラインを確認するのが良いでしょう。不動産売買取引で無用なトラブルを招いて後悔しないよう、準備しておいてくださいね。

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監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一 弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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