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小規模宅地等の特例とは?要件や計算法、必要書類をわかりやすく解説

2024.12.26

小規模宅地等の特例とは、宅地の土地評価額を最大80%減額できる制度です。小規模宅地等には3つの種類があり、それぞれ要件や計算方法が異なります。この記事では、小規模宅地等の特例について解説し、要件や計算方法、必要書類と注意点を紹介します。

小規模宅地等の特例とは

最初に、小規模宅地等の特例とはどんな制度なのかわかりやすく解説します。

土地評価額を最大8割まで減額できる制度

小規模宅地等の特例とは、土地を相続して一定の要件に当てはまる場合、土地評価額を50%または80%減額できるという制度です。正確には「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」といいます。

土地評価額は相続税を算出する基準になるもの。評価額が低ければ、相続税も少なくなります。小規模宅地等の特例は、節税対策として多くの人が利用している制度です。

小規模宅地等の特例を活用するメリット

特例のメリットは、相続する土地の相続税を軽減できる点です。要件によって宅地等の評価額を下げ相続税の負担を減らすことで、配偶者や子供など残された家族がその家に住み続けられるようにする目的で創設されました。

法定相続でなく遺言で土地を相続した場合にも受けられます。

小規模宅地等の種類と適用要件・計算方法

小規模宅地等の特例を使える土地の種類は大きく3つあります。それぞれの適用要件と計算方法を紹介します。

①特定居住用宅地等

特定居住用宅地等とは、被相続人や被相続人と同一世帯の親族が、相続開始直前まで住んでいた土地を指します。

特定居住用宅地等の適用要件
特定居住用宅地等では、限度面積330㎡まで土地評価額の80%が減額されます。特定居住用宅地等で特例が使えるかどうかは、相続人によります。

特例が適用されるのは相続人が以下の3つの場合です。

  1. ①配偶者
  2. ②同居の親族
  3. ③同居親族以外

被相続人の配偶者は、特別な条件なく特例を受けられます。相続開始時に被相続人と同居していた親族も受けられますが、住民票が一緒でも同居の実態がなければバレる可能性があります。その場合、特例は使えないため注意しましょう。同居の期間は問いません。

同居していない親族が適用を受けるには、以下の要件が必要です。

  • ・被相続人に配偶者がいない
  • ・被相続人に相続人となる同居者がいない
  • ・相続開始前3年以内に、取得者が自分または自分の配偶者、3親等以内の親族などの持ち家に住んだ事実がない
  • ・相続時にその親族が住んでいる家屋を過去に所有したことがない
  • ・申告期限までその宅地等を所有している

参照:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

特定居住用宅地等の計算方法
特定居住用宅地等の相続税を実際に計算してみましょう。

面積330㎡、路線価30万円の土地の場合
【330㎡×30万円×(1-0.8)=1,980万円】

課税対象額は1,980万円ですが、基礎控除内なので相続税は非課税です。

②特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等

被相続人が相続発生まで、事業用にしていた宅地等に特例を適用できます。被相続人と生計を同じくする親族が事業に使っていた土地も適用対象です。特定同族会社事業用宅地等と呼ばれます。

特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等の適用要件
特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等は、400㎡までは80%の評価減を適用できます。

相続税の申告期限まで土地を保有して事業を営んでいることが要件です。自宅以外に店舗用の土地を所有していたような場合、自宅は特定居住用宅地等として、店舗用の土地は特定事業用宅地等として、それぞれ特例を適用できます。

特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等の計算方法
被相続人の個人事業として使用していた土地450㎡、土地の評価額4,500万円を例にして考えてみましょう。

土地450㎡のうち限度面積400㎡が評価額の80%を控除できます。
【評価額4,500万円×400㎡/450㎡×0.8=3,200万円】

 

③貸付事業用宅地等

アパートやマンション、駐車場など被相続人が貸付用としていた宅地等にも、特例が適用可能です。この場合、一定要件を満たせば200㎡まで50%の評価額を減らせます。

ただし、条件によっては認められないこともある点に注意してください。

貸付事業用宅地等の適用要件
貸付事業用宅地等の適用要件は、限度面積は200㎡までで減額割合は50%です。

相続開始前から土地を貸付していること、相続税の申告期限まで貸付していることが必要になります。また、特例の適用を受けるには建物や構築物が必要で、整備されていない青空駐車場のような場所は適用外です。

その他、相続開始前3年以内に貸付を始めた不動産は特例の対象外になります。

貸付事業用宅地等の計算方法
被相続人が貸していたアパートの土地100㎡(貸家建付地)で評価額1,400万円の場合を例にしてみます。

貸付事業用宅地等は限度面積200㎡なので、この場合はすべての土地に対して50%控除が可能です。

【評価額1,400万円×100㎡/100㎡×0.5=700万円】
控除額は700万円、残りの700万円が課税対象額ですが、基礎控除額以下のため非課税です。

小規模宅地等の特例を利用するときに必要な書類

小規模宅地等の特例を利用する際に必要書類は、申請者と小規模宅地等の種類で異なります。共通で必要な書類と小規模宅地等別に必要な書類を紹介します。

共通で必要な書類

共通で必要な書類は、以下の通りです。

  • ・相続税の申告書
  • ・遺言書または遺産分割協議書の写し
  • ・図形式の法定相続情報一覧(被相続人と相続人の関係を証明するもの)
  • ・被相続人の戸籍謄本(相続発生日から10日以降に作成されたもの)
  • ・相続人全員の印鑑証明書
  • ・申告期限後3年以内の分割見込書

特定居住用宅地等の場合
特定居住用宅地等の場合、相続人によって必要書類が異なります。

配偶者であれば、共通書類のみで特例を受けられます。同居中の他の親族が相続する場合は、追加で住民票の写しが必要です。

同居していない親族は、戸籍の附票の写し、相続する家屋の登記事項証明書および借家の賃貸借契約書等が求められます。これは、相続発生前の3年以内に同居していないことや、賃貸住まいであったことの証明となる書類です。

特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等の場合
個人事業主であれば、特別な書類は必要ありません。ただし株式会社や有限会社など法人名義の社屋や事務所の建物がある場合は、下記の書類が必要になります。

  • ・対象法人の定款の写し
  • ・対象法人の登記事項証明書
  • ・対象法人の株主名簿

貸付事業用宅地等の場合
貸付事業用宅地等の場合は基本的に特別な書類は不要ですが、相続発生前3年以内に新たに被相続人等の特定貸付事業として使われた場合は、賃貸借契約書や確定申告書の添付が必要です。

これは、被相続人等が相続発生日まで3年を超えて特定貸付事業を行っていたことの証明になります。

小規模宅地等の特例の注意点

小規模宅地等の特例を受ける際には、いくつか注意すべきポイントがあります。

相続税の申告書提出が必須

小規模宅地等の特例を受けるためには、期限内に相続税の申告書を提出していることが条件です。相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。早めに申告を行うようにしましょう。

相続時精算課税による贈与で取得した宅地等には適用不可

対象の土地がもし相続時精算課税制度を適用して生前贈与された土地であった場合、小規模宅地等の特例の対象外です。

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫へ財産を贈与した場合で、2,500万円までであれば贈与税が課税されないという制度。被相続人が死亡して相続が発生したら、相続財産として合算して課税対象になります。

相続時精算課税制度を適用すると、場合によっては相続税が高くなることも。

制度の利用については、相続分野に詳しい弁護士・税理士・行政書士などと相談しながら考えるのがおすすめです。

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小規模宅地等の特例とは節税効果の高い相続税法上の制度

小規模宅地等の特例とは、一定の条件を満たすと土地の評価額を最大8割下げられる制度です。うまく活用すれば大幅な節税を期待できますが、要件はたびたび税制改正されるため場合によっては使えないこともあります。

小規模宅地等の特例を受けたいなら、相続に詳しい専門家に早めに相談してみてください。

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