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持ち家があっても生活保護を受給できる?売却しなくて良い条件とは

2024.02.04

持ち家があると、原則売却をしなければ生活保護を受給できません。しかし、現在持ち家に住んでいる場合や、住宅ローンを完済している場合は受給できる可能性があります。

ここでは、生活保護の受給要件や、持ち家を売却しないといけないケースについて詳しく説明します。

生活保護とは?持ち家があると受給できない?

生活保護とは、生活困窮者を保護し、健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度です。世帯全員を合わせても、収入が最低限度の生活を営むのに必要な収入に満たない場合、困窮度に応じて保護費が支給されます。

基準となるのは、定められた算出方法で決められる「最低生活費」です。一般的に自治体ごとに異なります。

生活保護を受けるには、生活を維持するために活用できるものはすべて活用することが大前提です。資産や労働力、公的手当などあらゆるものを活用し、それでも尚「最低限度の生活」に満たない場合、生活保護を受給できます。

資産には不動産も含まれるため、持ち家がある場合は売却するのが原則です。ただし、要件によっては持ち家を売却せずに生活保護を受給できる場合もあります。

生活保護の受給要件については、以下で詳しく説明します。

生活保護の受給要件3つ

生活保護を受給するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。「収入がない」「資産がない」「扶養してくれる親族がいない」について詳しく説明します。

1.働けない理由があり収入がない

理由があって、最低限生活できるだけの収入がないことが要件のひとつです。例えば、病気や障害など、働きたくても働けない状況にあれば要件に当てはまります。

前述の通りあらゆるものを活用することが大前提なので、まず年金や手当などの制度を利用する必要があります。

それでも最低生活費に満たない場合、最低限の生活に必要なだけの額を受給する資格があるのです。尚、働いている場合で世帯年収が最低生活費を下回っている場合も同様です。

2.資産を持っていない

資産を持っていないことも要件のひとつです。資産とは、預貯金や不動産、自動車、保険など、処分することで現金化できるもののことをいいます。

まずはこうした資産を処分し、生活費にあてる必要があります。それでも最低生活費に満たなければ、生活保護を受けられるのです。

3.扶養可能な親族がいない

扶養してくれる親族がいないことも要件です。親族が生活を援助してくれる場合、それも収入と見なされるためです。そのため、家族の扶養に入る場合は生活保護は受けられません。

誰の援助も受けられない場合は、生活保護の受給資格があると見なされます。

持ち家があっても生活保護を受給できる条件2つ

前述の通り、不動産は売却する必要がありますが、例外の条件が2つあります。以下で詳しく説明します。

条件1|現在住んでいる場合

現在持ち家に住んでいる場合は、基本的に住み続けたまま生活保護を受給できます。

持ち家に住んでいる場合は、売却すると住む場所がなくなるため、賃貸住宅などに引っ越す必要があります。引っ越し費用や家賃の支払いが負担になる場合、更なる困窮に繋がってしまうため、持ち家に住むことを許されるのです。

ただし持ち家に住んでさえいれば、必ずしもそのまま住み続けられるわけではありまん。持ち家を売却する必要があるケースは、後で詳しく説明します。

条件2|住宅ローンを完済している場合

持ち家の住宅ローンを完済していれば、持ち家に住み続けながら生活保護を受給できます。

住宅ローンが残っている場合は、生活保護費で借金を返済することは認められないため売却する必要があります。詳しくは以下の章で解説します。

持ち家を売却しないといけない3つのケース

持ち家を売却しないと生活保護が受けられないケースは、「住宅ローンが残っている」「持ち家の資産価値が高い」「誰も住んでいない」の3つです。以下で詳しく説明します。

1.住宅ローンが残っている場合

住宅ローンが残っている場合は、生活保護受給が認められません。住宅ローンを生活保護費で支払うことは認められないためです。

持ち家は資産なので、生活保護費で住宅ローンを支払うのは、資産を生活保護費で形成する行為と見なされます。それは生活保護制度の「最低限度の生活を保障する」という目的から逸脱するため、受給対象から外されているのです。

ただし、あと少しで住宅ローンを完済する場合は、生活保護を受給できることがあります。まずは、生活保護の窓口である福祉事務所に確認してみると良いでしょう。

2.持ち家の資産価値が高い場合

持ち家の資産価値が高い場合は、売却を求められます。

厚生労働省は、売却対象となる目安を「標準3人世帯の生活扶助基準額と同住宅扶助特別基準額を足したおおむね10年分(約2000万円程度)を目途」としています。つまり、2000万円以上の価値がある持ち家は売却対象となるのです。

また、持ち家の広さも関係します。例えば、家族の人数と比べて部屋数や面積がある家に住んでいるケースは、家を売却したほうが金銭的メリットがあると判断され、売却を求められます。

3.誰も住んでいない場合

誰も住んでいない家を持っている場合、売却するよう求められます。すぐに現金化できる資産と見なされるためです。

ただし、相続した持ち家が遠方にあるケースなど、すぐに売却するのが難しい場合は、保持したまま生活保護を受給できる可能性があります。早急に受給したい場合は福祉事務所に相談してみましょう。

持ち家に関わることでよくある質問2つ

持ち家と生活保護に関わるよくある質問を2つ紹介します。

1.親から相続される場合は?

親から相続する家が高い価値のあるものであれば、生活保護は受給できません。前述した通り、生活保護の受給要件の中に「あらゆるものを活用しなければならない」とあるためです。

そのため、生活保護を受給するために相続放棄をすることも原則禁止です。生活保護制度は保護受給者の自立を目指しているため、価値ある資産を相続する権利のすべてを放棄することは、その目的から逸脱することになるからです。

また、生活保護受給中に相続した場合、場合によっては受給した保護費の返還を求められることがあります。相続した不動産の価値にもよるため、念頭においておくと良いでしょう。

2.売却しても住み続けられる?

売却した持ち家に住み続ける方法はあります。リースバックで売却するケースです。

リースバックとは、不動産会社に持ち家を売却した後、賃貸借契約を結ぶことをいいます。

売却金額が相場以下になるというデメリットはありますが、持ち家があることにはならないため、生活保護の受給対象になります。ただし、資産価値の高い不動産を売却し売却代金が資産として残る場合は受給できません。

持ち家があっても生活保護を受給できる可能性はある

生活保護を受給するなら、原則持ち家を売却する必要がありますが、持ち家に住んでいる場合や住宅ローンを完済している場合は、売却せずに生活保護を受けられることがあります。

ただし、持ち家の資産価値が高い場合などは上記の限りではなく、たとえ現在住んでいたとしても売却することを求められます。

生活保護は「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」ための制度です。持ち家を売却することが更なる資産活用に繋がる場合は、売却することを求められるのです。

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監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一 弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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