空き家を放置すると、近隣住民から苦情が来る可能性があります。空き家への苦情は、害虫、臭い、建物の傷みによる危険などさまざまです。最悪の場合、裁判所に訴えられることも。
ここでは、空き家に苦情が寄せられる理由や具体的な対策について解説します。
目次
空き家の主な苦情4つ
空き家に寄せられる主な苦情には、「害虫」「臭い」「傷み」「害虫」の4つがあります。それぞれ詳しく確認していきましょう。
1.害虫
手入れされないまま草木が生い茂ると、ダニや蚊、人体に害を及ぼすマダニなどの、害虫が大量発生する恐れがあります。
特にマダニは、さまざまな病原菌を保有しているため、噛まれると重症熱性血小板減少症候群などの、病気に感染するリスクがあります。近隣住民にも害を及ぼす害虫が発生するような環境は、トラブルの要因となるのです。
2.臭い
放置された空き家は、悪臭が発生しやすいものです。その要因は、主に「排水管の水切れ」「ゴミの不法投棄」の2つです。
排水管は、わざと水を溜めておく機能を設けることで、下水からの悪臭を防いでいます。しかし、長い間放置していると溜めておいた水が蒸発し、下水の異臭が上がってきてしまうのです。定期的に水を流せば問題ありませんが、悪臭が発生した場合は掃除をしないと臭いが取れません。
また、人気のない空き家はゴミを不法投棄されやすいため、ゴミの臭いが悪臭となることもあります。
3.傷み
空き家を放置すると建物が老朽化し、崩壊する恐れがあるため苦情に発展します。掃除や換気をしていないと室内に湿気がこもるため、カビやシロアリが繁殖しやすい環境になるためです。
特に木造住宅の場合は、1か月ほど放置しているだけで建物の傷みは深刻なものとなり得ます。崩壊してしまうと、近隣住民に命の危険が及ぶため、空き家が劣化している場合はすぐに対策を行うべきです。
4.害獣
放置された空き家に害獣が棲みつくと、火災や倒壊のリスクが高まります。
ハクビシンやネズミ、アライグマなどの害獣にとって、人の気配のない空き家は格好の住処。害獣が住み着くと、天井が糞尿で腐って落ちたり柱をかじられたりと、家が崩壊する原因になります。
さらに電気が通っている空き家の場合、かじられた配線コードがショートを起こし、火災が起きる恐れもあります。害獣が棲みつかないよう定期的に空き家に通い、人の気配を感じさせておくのをおすすめします。
そのほか空き家の苦情につながるトラブル2つ
空き家は人の目が届きにくいため、放火や犯罪に巻き込まれることがあります。以下で詳しく説明します.
1.放火
放置されている空き家は人の目がなく侵入しやすいため、放火される危険があります。前述したとおり、空き家は不法投棄されたゴミや草木など、燃えやすいものがあります。一度火をつけられてしまうと大きな火災になり、隣の家にまで燃え広がる可能性もあるのです。
不審者に放火されないようフェンスや門を設置したり、空き家を管理して人目が行き届いていることをアピールするなどの配慮をすると良いでしょう。
2.犯罪
空き家は、犯罪に利用されることもあります。過去には、空き家に空き巣が入り現金や貴金属が盗まれる事件や、空き家で薬物の密輸販売が行われる事件などが発生しています。また、侵入者が勝手に空き家に住みつき、逮捕される事件もありました。
近隣で事件が起きれば、住民は不安になるだけでなく、地域周辺の不動産の資産価値も下がり、物件売買したい住民は迷惑を被ります。犯罪に利用されないよう、定期的に空き家に通って人目があることをアピールしたり、異変がないかを確認したりするようにしましょう。
空き家の苦情どこからくる?
空き家への苦情は、近隣住民から直接来ることもあれば、行政や裁判所から連絡が来ることもあります。以下で詳しく説明します。
近隣住民から
空き家が適切な管理をされていないことで最も迷惑を被るのは近隣住民です。
近隣住民が所有者の連絡先や住所を知っていれば、直接苦情が来ることもあるでしょう。また、所有者と直接交流がなくても、親の世代から交流がある場合は連絡先を知られていることもあります。
行政から
近隣の住民が連絡先を知らない場合は、行政を通じて連絡がくる可能性が高いでしょう。
2014年11月に制定された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、自治体は固定資産課税台帳を利用して所有者の特定ができるようになりました。
それだけでなく、行政による立ち入りや指導・勧告が可能になり、場合によっては行政代執行による取り壊しや情報公開などの措置が取られることもあります。連絡が来たら早急に対応しましょう。
危険がある場合は裁判所に訴えられることも
近隣住民に明らかな害を及ぼす場合は、裁判所に訴えられる可能性もあります。
空き家の管理不足により近隣住民の土地や建物を侵害している、または権利の侵害が発生する恐れがある場合、近隣住民はそれを排除ないし阻止する権利があります。
隣人が権利を行使し裁判所に訴えた場合、所有者は裁判所から改善や賠償などの措置を命じられることになるでしょう。
空き家の苦情の対策法4つ
空き家への苦情対策としては「自分で住む」「賃貸や民泊として貸す」「駐車場にする」「管理代行サービスに依頼する」の4つがあります。以下で詳しく説明します。
1.空き家に自分が住む
自分自身が空き家に引っ越せるのなら、掃除や庭の草木の手入れも無理なくできるので、苦情を受けるリスクを減らせます。
しかし、引っ越しや空き家の修繕など、費用や手間がかかることも忘れてはいけません。家が激しく劣化している場合は、リフォームしたところで長く住めないこともあります。家の状態とかかる費用・手間を調べて、検討すると良いでしょう。
2.賃貸や民泊として貸す
空き家を賃貸や民泊として利用するのも一つの手です。入居者や宿泊者が入れば、家の管理を行いつつ収入を得られます。
その一方で、収益が成り立つかの判断は慎重に行う必要があります。リフォーム費用や設備の管理維持費など、出ていくお金も大きいからです。賃貸や民泊として利用する場合は、利用したいと思ってもらえるように隅々までリフォームする必要があります。そのため、自分で住む場合よりリフォーム費用は高くつきます。
空き家にかかる出費はもちろん、立地や周辺状況、自身の経営の知識なども考慮して、収益を黒字化できそうか判断するべきでしょう。
3.解体して駐車場にする
空き家を解体して駐車場にすれば、空き家の倒壊リスクを無くすことができます。ただし、空き家を解体し、駐車場として整地するために多額の初期費用がかかります。
更に、空き家を解体すると、固定資産税が6倍に跳ね上がります。これは、住宅用地に適用されていた「固定資産税等の住宅用地特例」の対象外となるためです。家が建っている土地は固定資産税が6分の1に減額されますが、空き家を解体すると住宅用地とみなされなくなるのです。
立地が良く、初期費用や固定資産税を回収できるほど需要が見込める場合におすすめです。
4.管理代行サービスに依頼する
遠方に住んでいる、空き家に通う時間がないなど、自分で管理できない場合は管理代行サービスに依頼する方法もあります。空き家管理代行サービスでは、空き家の掃除や換気、敷地内の巡回などを行い、設備に不具合があったときは連絡もしてくれます。
ただし、空き家管理代行サービスでは基本的に修繕対応はしません。また、毎月委託費用が発生するため、空き家までの移動時間や交通費などの節約効果と比較して検討すると良いでしょう。
管理が不十分の場合は固定資産税が6倍になる
放置を続け、特定空き家に指定されてしまうと、固定資産税が跳ね上がるため注意が必要です。
特定空き家とは、管理が不十分で、安全・衛生・景観上問題がある場合に指定される空き家のことです。前述したように、家が建っている限りは固定資産税が6分の1となる減額措置があります。しかし、特定空き家に指定されると減額の対象外になるため、しっかりとした対策が必要です。
空き家の固定資産税については、下記記事で詳しく解説しています。
放置すると空き家の固定資産税が6倍に!維持にかかる税金と増税する原因を解説
空き家を管理できない場合は売却するのも一つの手段
所有者として空き家の管理が難しいのであれば、売却を検討するのがおすすめです。空き家を売却すれば、管理にかかる手間や近隣トラブルの心配もなくなり、管理費用や固定資産税なども支払う必要がなくなるからです。
売却を検討するとき、家の老朽化が進んでいる場合は売れるか心配になる方も多いかと思いますが、リフォームせずに売れる方法があります。不動産売買では、業者が仲介して買主を探す方法のほかに、買取業者に売却する方法があるので、そのままの状態で買取ってもらうことも可能なのです。
空き家の売却について詳しく知りたいなら、下記記事を参考にしてください。
【空き家売却】5つの相談窓口|相談事例や売却方法についても解説
空き家の苦情を避けた管理をしよう!
きちんと管理されていない空き家には、近隣住民や行政から苦情が来る可能性があります。空き家を放置すると、害虫や建物の傷みによる倒壊の恐れ、犯罪の発生など、近隣に悪影響を及ぼすためです。空き家の管理が改善されない場合、最悪裁判所に訴えられることもあります。
所有者として管理し続けるなら、自分が入居したり賃貸などで貸し出したりとさまざまな方法がありますが、管理が難しい場合は売却するのがおすすめ。まずは一度、不動産業者に空き家について相談してみるのが良いでしょう。
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1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。