深刻化する空き家問題解消のために設けられた、空き家対策特別措置法が令和5年に改正されました。この改正によって従来よりさらに空き家対策が強化され、場合によっては固定資産税がこれまでの6倍になる空き家も出てくる可能性があります。
本記事では、空き家対策特別措置法の改正内容や注意点についてわかりやすく解説します。
目次
空き家対策特別措置法とは
空き家対策特別措置法とは、2015年に施行された空き家に対応するための法律です。
放置された空き家は、放火の標的になりやすかったり、草木が伸びて害虫・害獣が住み着いたりなど、周辺住民に防災や防犯、衛生上の悪影響を及ぼします。そのため、責任の所在を明確にして行政の対応方法を確立させる目的があります。
また、空き家対策特別措置法には、空き家問題を解消して周囲環境を整え資源の活用を図る主旨が含まれているのが特徴です。
空き家対策特別措置法は、2023年6月に改正されました。
空き家対策特別措置法改正の背景
空き家対策特別措置法は2023年に改正されましたが、改正の背景は、2015年の空き家対策特別措置法施行後も空き家が増え続けたためです。
空き家が増え続けたのは、市町村の権限が限定的であったこと、予防的な対策が行えなかったことなどが原因と考えられたため、改正する運びになりました。
空き家対策特別措置法改正のポイント
2023年の空き家対策特別措置法の改正は、空き家対策をより強化する目的で行われました。改正の大きなポイントは、管理不全空き家の新設・空き家等の活用拡大・特定空き家所有者に対する責務強化の3つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
管理不全空き家の新設
空き家対策特別措置法改正によって、管理不全空き家が新設されました。
管理不全空き家とは、放置すると特定空き家になる恐れのある空き家のことです。特定空き家になる前に、国や自治体が管理不全空き家に指定することで、所有者に管理指針に則した措置を行うよう指導や勧告できるメリットがあります。
管理不全空き家に指定され勧告や命令を受けても改善が見られない場合、罰則規定もあります。
空き家等の活用拡大
空き家対策特別措置法の目的の一つに、住宅資源の有効活用や地域の活性化があります。地域に空き家が増え続けるとコミュニティ機能の低下が懸念されるため、空き家を活用拡大することで地域活性化につなげるのが主旨です。
これまでも移住者向けに空き家を活用するなどの取り組みはありましたが、法規制によって建て替えや修繕が滞ることも少なくありませんでした。
そこで、あらたに市町村が建築基準法等で定められている規制を緩和できる「空家等活用促進区域」を設定できるように空き家対策特別措置法を改正。空き家の活用を促進できるようになりました。
加えて、市町村が空き家の活用や管理に取り組み専門知識を持つ団体等を「空家等管理活用支援法人」に指定して、所有者等へ情報の提供や相談対応等を行えるようになったのもポイントです。
特定空き家所有者に対する責務強化
特定空き家の所有者に対する対応強化も、改正のポイントです。自治体に報告徴収権が付与されたため、所有者への勧告や命令がこれまでより迅速にできるようになりました。
例えば、これまで特定空き家等の除却には、緊急時であっても命令を経る必要がありました。それが改正によって、災害時などの緊急事態であれば命令等の手続きを経なくても行政が空き家の解体・撤去などを行う代執行が可能に。
代執行による解体費用なども、改正によって強制的に徴収が可能です。
空き家特別措置法改正が所有者に及ぼす影響
空き家対策特別措置法によって特定空き家、管理不全空き家に指定された場合、所有者は行政から「助言・指導」「勧告」「命令」「代執行」の措置がとられることがあります。具体的にどのような影響があるのか解説します。
「助言・指導」は書面や電話での通知
近隣住民からの苦情が行政に寄せられた場合に、適正管理を求める助言が行われます。
庭の草木を整備してくださいなどの容易な内容が多く、書面や電話で行われることがほとんどです。助言はあくまでも改善要求ではありますが、改善の余地がなければ指導になります。指導は、助言よりも重く適正管理を強く促すものです。
特定空き家や管理不全空き家に認定されると、行政が敷地内に立ち寄り調査することが可能になります。
「勧告」を受けると固定資産税が最大6倍に
行政による助言や指導で改善が見られない場合、特定空き家や管理不全空き家の所有者に対して相当の猶予期間を設けて必要な措置をとることを勧告します。
勧告も書面で行われますが、罰則対象です。一刻も早い対応が必要になります。
勧告は、空き家の状態が悪く住宅用地として必要な管理を怠っていると判断されているということです。そのため、住宅用地特例が解除され固定資産税の優遇措置が受けられなくなります。
住宅用地特例では最大土地の固定資産税が1/6になっていますが、優遇措置が受けられないと本来の固定資産税を支払わなくてはならないため、6倍になることもあります。
ただし、勧告後状況が改善されれば再度特例を受けられます。
「命令」に背くと50万円以下の罰金
勧告を受けても従わずに改善しない場合、行政は改善命令を出します。
それでも命令に従わず改善されない場合、50万円以下の過料が科されてしまうため注意してください。
命令は行政処分とよばれる行為で、厳しい通告となります。このまま放置すると倒壊の危険や火災のリスクなど近隣住民の安全を脅かす可能性があるため、一刻も早い迅速な対応が必要です。
「代執行」で建物除去などを行う
空き家対策特別措置法における最も重い罰則が、行政代執行です。命令を受けてもなお改善が見られない場合、行政代執行により行政が改善措置を実行します。
樹木の伐採や塀の撤去、建物の解体が行われる可能性もあります。撤去や解体にかかった費用は、所有者に請求されます。その費用は、一般的な相場より高額になるケースが多いようです。もし支払いを拒否すれば、差し押さえも可能です。
特定空き家、管理不全空き家に指定されないためには
所有する空き家が特定空き家・管理不全空き家に指定されないためには、適切な管理が欠かせません。
特定空き家、管理不全空き家に指定されないための方法を解説します。空き家の状態が劣化や悪化する前に、売却または有効活用の検討が重要です。
空き家を活用する
相続した空き家などの場合、立地が良ければリフォームや建て替えをして自宅として利用したり、賃貸物件にしたりする方法がおすすめです。
賃貸にすれば、借り手が定期的な換気や清掃をしてくれ、賃料も手に入るため、空き家の維持管理が楽になります。
空き家を売却する
空き家は売却も可能ですが、手間がかからないのは家をそのままに中古住宅付き土地として売却する方法です。
ただし、築年数が古いなら解体して更地を売却する方法もあります。解体には相当の費用がかかるため、どちらが良いか見極めるのは難しいでしょう。
空き家の売却や解体に悩んだら、住栄都市サービスにご相談を。住栄都市は、解体も任せて売却可能なので売り手の考える手間がありません。契約不適合責任も免除可能です。
空き家の解体に補助金は出る?
空き家の解体には、多額の費用がかかります。自治体によっては、空き家の解体に補助金や助成金があるところもありますので、確認してみましょう。
空き家の解体に補助金が利用できる理由は、地域振興やまちづくりを促進するためです。空き家を解体することで地域の景観や治安、住みやすさが向上することも期待できるからといえます。
自治体によって補助金の呼び名や要件、金額が異なるため公式ホームページなどで確認してみましょう。
空き家特別措置法改正を正しく理解しよう
2023年に改正された空き家特別措置法は、空き家による周辺住民への危険性を排除し地域活性化を促進する目的の法律です。
特定空き家や管理不全空き家に指定されて行政からの指導や助言に従わないと、固定資産税が増額となったり、罰則を受けることもあります。空き家対策特別措置法を正しく理解して、所有する空き家を適切に管理しましょう。
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1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。