不動産が遠方にあっても売却は可能です。売却活動も契約も現地に行かずに行えます。しかし、一度も現地に行かずに売却するのはおすすめできません。不動産売却をスムーズに行うために、不動産会社選びなどは実際に現地に行って会うことが重要です。この記事では遠方の不動産を売買契約する方法や、売却の流れ、注意点などを解説します。
目次
不動産が遠方にあっても売却はできる
不動産売買契約は対面で行うのが原則ですが、現地に行けない場合も売却することはできます。
不動産の契約では、基本的に売主・買主・不動産会社の三者が立ち会い、契約を結ぶのが原則です。しかし、「売却したい不動産が遠方にある」「仕事で忙しい」などの事情により、なかなか現地まで行けない場合は対面での契約が難しくなります。
現地に行けない場合でも不動産を売却する方法を、以下で詳しく解説します。
遠方の不動産を現地に行かずに売却する方法4つ
現地に行かずに不動産を売却する方法は、「持ち回り契約を行う」「代理契約をする」「司法書士に依頼する」「現地の不動産会社に買い取ってもらう」の4つです。以下で詳しく説明します。
1.持ち回り契約を行う
持ち回り契約とは、不動産会社が買主・売主と別々に訪問(または郵送)してやりとりし、契約する方法のことです。
売主や買主が現地に行けない場合や、売主買主のスケジュールが合わない場合などで用いられます。スケジュールを合わせる必要がなく、移動コストもかからないのがメリットです。
その反面、契約締結までに時間がかかるのがデメリットです。基本的に売買契約は本人立ち会いのもと行うため、その場で契約が成立しますが、持ち回り契約では契約書を持ち回る間に買主の気が変わり、破談になるおそれがあります。
不動産会社の迅速な対応が肝となるため、信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。滞りなく手続きを進められるよう、しっかりフォローをしてくれる不動産会社を選びましょう。
2.代理契約をする
代理人を委任し、本人の代わりに不動産契約を行ってもらう方法もあります。
通常、不動産売買は法律行為にあたるため、本人以外が契約を行うことは認められていません。しかし、代理権委任状を作成し代理権を付与すれば、本人の代わりに不動産契約をすることができます。
ただし、代理人の行った行為は本人と同等の効力を発揮するため、思わぬトラブルを起こす恐れもあります。代理人選びは慎重に行いましょう。
3.司法書士に依頼する
司法書士と代理契約を結び、代理人として売買契約を行ってもらうのも方法のひとつです。
司法書士は法律の専門家のため、安心して任せられるのがメリットです。報酬や交通費などの支払いが必要なので、事前見積もりをして費用面でもマッチするか確認しましょう。
司法書士を選ぶ際は、不動産売買手続きの実績が豊富な人を選ぶことが大切。信頼に値するかを判断するためにも、実際に司法書士と会って面談するのも有効です。
4.現地の不動産会社に買い取ってもらう
現地の不動産会社に直接買ってもらう方法もあります。
ここまで紹介した方法は、不動産会社に仲介してもらい売却する場合の対処法でしたが、不動産会社に直接売却すれば短期間で確実に売却できます。契約も二者間で成立するため、持ち回り契約で破談になったり、代理人とトラブルが発生したりするリスクも低くなります。
仲介に比べると売却価額は低くなりますが、確実に売却したい人は買取の選択肢を加えるのもひとつの手です。まずは相談から始めてみてはいかがでしょうか。相談はこちら
遠方の不動産を売却する流れ
遠方の不動産をスムーズに売却するには、売主側でも流れを把握し、準備しておくことが大切です。売却までの流れを、順番に解説します。
1.売却準備
まず、複数の不動産会社へ価格査定を依頼します。これは依頼内容が仲介と買取のどちらでも同様です。
不動産会社は「売却活動に強い」「大手よりも現地の不動産会社のほうが情報を持っている」などそれぞれ強みが異なるため、会社の規模にかかわらず査定依頼するのがおすすめです。
不動産会社を選ぶ際、抑えるべきポイントは以下の通りです。
- ・提示された査定額に根拠があること
- ・対応が丁寧で誠実なこと
- ・地元の情報に詳しいこと
また、別途費用が必要ですが、売却までの期間の不動産管理まで行ってくれる会社もあります。そういったサービスも利用したい場合は検討事項に含めて考えると良いでしょう。
2.媒介契約(仲介のみ)
不動産会社に仲介してもらう場合は、不動産会社に買主を探してもらうために媒介契約を結びます。媒介契約には、「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があります。違いは以下の通りです。
媒介契約の種類 | 買主との直接取引 | 複数社との媒介契約 | 契約期間の定め |
---|---|---|---|
一般媒介 | 可 | 可 | 定めなし |
専任媒介 | 可 | 不可 | 3か月以内 |
専属専任媒介 | 不可 | 不可 | 3か月以内 |
早く買主を見つけたい場合は、専任媒介契約か専属専任媒介契約がおすすめ。「媒介契約を結べるのは1社のみ」と定められた契約であり、不動産会社は定期的に売主に状況報告する義務があるため、積極的な宣伝活動が期待できます。
3.売却活動(仲介のみ)
仲介で媒介契約を結んだあとは、不動産会社が売却活動を行います。具体的には以下のような活動です。
- ・チラシやWEBに広告を出す
- ・店頭で物件の紹介をする
- ・不動産流通機構に物件を登録する
売却活動と並行して、売買契約の準備をしておくとスムーズです。特に重要事項説明書は契約締結前に提示する必要があるため、事前に不動産会社と記載内容を打ち合わせておくとよいでしょう。
4.売買契約
売却活動で見つかった買主、もしくは不動産買取会社と売買契約を交わします。買主からの購入申し込みがあり、手付金を納付されたら、売買契約締結に入る流れです。
前述の通り、売主本人が現地に行けない場合は、売買契約以降のやりとりを持ち回り契約や代理人などを通じて行うことになるでしょう。
5.残金の決済と引き渡し
契約手続きが完了したら、手付け金を差し引いた残金を決済し、不動産の引き渡しを行います。不動産の引き渡しまでに、抵当権の抹消や所有権の移転登記も行いましょう。
尚、一般的な不動産の売却スケジュールは下記で詳しく説明しています。
「不動産売却のスケジュールと期間|具体的な流れや短くするコツも解説」
また、仲介と買取の違いについては、下記に詳細があります。仲介と買取でどちらにするか迷っている場合は、合わせて確認するとよいでしょう。
不動産売買の「仲介」と「買取」の違いとは?メリットやデメリットもチェック
遠方の不動産売却に必要な書類
遠方の不動産を売却する際、必要な書類は以下の通りです。
- ・身分証明書
- ・売主の実印(共有名義の場合は全員分必要)
- ・印鑑証明書(直近3ヵ月以内のもの。共有名義の場合は全員分必要)
- ・登記済権利証または登記識別情報
- ・固定資産税納税通知書
- ・固定資産税評価証明書
- ・住民票
上記の他、抵当権抹消書類や土地測量図、境界確認書、建築確認済証などの書類が必要になることもあります。実際に契約する不動産会社に確認し、事前に準備しておくようにしましょう。
遠方の不動産売却における注意点2つ
遠隔地の不動産をスムーズに売却したいなら、不動産会社や代理人選びに注意が必要です。また、売主の積極性も大切になります。注意点を以下で詳しく説明します。
1.不動産会社や代理人などは会って決める
不動産会社や代理人となる司法書士とは、なるべく対面で会って決めるのがおすすめです。
これまで述べてきたように、不動産会社や代理人は、遠方の不動産の売却においてとても重要な役割を果たします。実際に会えば、雰囲気や説明の段取りなど、オンラインや電話では把握しづらいことも確認できます。
できるだけ現地に赴き、安心して任せられる不動産会社や代理人を選びましょう。
2.売主が積極的に売却活動を行う
仲介の場合、売却活動は不動産会社が行うものですが、売主側も主体的に関わるようにしましょう。
売却活動以外にも、売主が行わなければならないことや準備すべきこともあります。スムーズに進めるためには、売主自身もスケジュールの全体像を把握し、不動産会社と密に連携をとることが大切です。
遠方の不動産は計画的に売却しよう
不動産が遠方にあり、現地に行けない場合も売却する方法はあります。売却活動は不動産会社に任せ、契約締結は持ち回り契約や代理契約で行えば、現地に行かずとも売却できます。
しかし、不動産売却は高額な取引のため、売却活動をする不動産会社や代理人選びは慎重に行う必要があります。そのため、できるだけ対面で会ってから判断するのがおすすめです。
また、なるべく早くスムーズに売却したいなら、不動産会社に直接買い取ってもらうのもひとつの手です。住栄都市サービスは、都内近郊の買取実績が豊富にあります。ぜひ一度お問い合わせください。
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1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。