親が老人ホームへ入居する場合、実家を売却して入居資金に充てるのはひとつの手です。ただし、親が売却に対して同意しているか、同意していないかによって方法や手段が異なるので注意が必要です。ここでは、老人ホームに親が入居する場合に、実家の売却がおすすめである理由や、売却時の注意点についても解説します。
目次
親が老人ホームへ入るとき、実家は売却する?
親が老人ホームに入居することになったとき、実家を空き家のまま置いておくか、売却するか悩んでいる人は多いでしょう。結論から言うと、老人ホームに入った親が実家に戻る予定がなく、自分や兄弟も実家で暮らす予定もない場合は、売却も視野に入れて検討するのがおすすめです。
実家を処分すれば、売却金が手に入る、管理の手間をかける必要がなくなるなどのメリットがあります。その一方で、空き家のまま置いておく場合は、必ず誰かが実家を管理する必要があります。空き家を放置すると、管理不全空き家や特定空き家に指定され、税金の支払い額が跳ね上がる恐れがあるためです。
空き家を放置することのリスクは、以下の記事で詳しく説明しています。
【新改正】管理不全空き家はいつから固定資産税が6倍に?定義や回避方法を解説
幼少期を過ごした家であれば思い出があり、手放すことを躊躇するのは当然ですが、選択肢のひとつとして売却は検討すべき方法と言えるでしょう。
老人ホームに入る際に実家を売却するのが良い理由4つ
老人ホームに入る際に実家を売却すると、「実家を売却したお金で老人ホーム代を支払える」「空き家の維持管理の必要がなくなる」「親が認知症になる前なら売却しやすい」「売却時に3000万円控除が受けられる」の4つのメリットがあります。以下で詳しく見ていきましょう。
1.実家を売却したお金で老人ホーム代を支払える
実家を売却すれば、まとまったお金が手に入るので老人ホームの費用に充てられます。
老人ホームにかかる費用は、入居時に支払う入居一時金だけではなく、賃料や食費など月々の利用料も必要です。実家に誰も住まないのであれば、入居資金を捻出するために実家を売却するのは有効活用と言えるでしょう。
資金に余裕がなく少しでも早く売却したい場合は、不動産会社による買取での売却がおすすめです。買取実績の豊富な住栄都市サービスの不動産相談所に、ぜひご相談ください。
2.空き家の維持管理の必要がなくなる
人が住んでいない家でも管理や費用がかかりますが、実家を売却すれば、所有者が変わるので自分で管理する必要がなくなります。
前述の通り、人が住んでいなくても家の維持管理は必須です。特に、人が住まない家は換気や通水がされずどんどん老朽化していくため、定期的にメンテナンスする必要があります。それだけでなく、空き家を持つ限り火災保険や固定資産税の支払いも必要です。空き家の放置のリスクについては、詳しくは以下を参照してください。
空き家問題の現状とは?放置のリスクと対策方法
上記のようなリスクも、売却してしまえば心配する必要がなくなります。
3.親が認知症になると売却しにくくなる
基本的に家の売却は所有者本人しかできないため、親が認知症になってからの売却は手続きが複雑になります。
親が認知症になった場合の手段のひとつに、成年後見人として親の代わりに売却する方法がありますが、売却までに時間もお金もかかります。成年後見人を立てるには、家庭裁判所に申し立てを行い、選任してもらう必要があるためです。
さらに、成年後見人を弁護士などの専門家に委任する場合は、別途報酬が月々2~6万円程度必要になります。そのため、売却を考えているなら、親に判断力があるうちに動いた方が得策なのです。
親が認知症になった場合の不動産売買について、詳しくは以下を確認してください。
認知症の親が所有する不動産売買はどうしたらいい?利用できる制度や売却までの手順などを解説
4.マイホームを売ったときの3000万円控除が受けられなくなる
マイホームを売る時に3000万円の税金控除が受けられる特例がありますが、親が老人ホームに入ってからの売却の検討では特例が受けられなくなる可能性があります。
この特例は、マイホーム購入時の価額と売却価額を比較し、その利益が3000万円以内であれば税金を控除するというものです。特例の適用を受けるためには、家に住まなくなってから3年目の12月31日までに売却する必要があります。
特例を利用できないと、高額の譲渡所得税や住民税がかかるため、老人ホーム入居前に売却に向けて動くのがおすすめです。万が一、特例の期限に間に合わなくなりそうな場合は、早急に売却できる買取を検討すると良いでしょう。
親名義の実家を売却する方法|親の同意がある場合
実家の売却に親が同意している場合、委任状があれば親の代理人として売却活動ができます。委任状とは、所有者本人の代理人であることを証明する書類のことです。
委任状には、本人である親の印鑑証明書と本人確認書類の用意が必要です。また、売却金の受け取りや物件の引き渡しの前には、親の意思確認のための司法書士面談が必須です。全て代理人だけで完結するわけではないことも留意しておきましょう。
一般的には不動産会社が委任状の用意からサポートしてくれるため、まずは一度不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
親名義の実家を売却する方法|親の同意がない場合
実家を売却することに親が同意しない場合は、「リバースモーゲージの利用」「リースバックの利用」「任意後見制度の利用」の3つの手段があります。以下で詳しく説明します。
リバースモーゲージを利用する
リバースモーゲージとは、実家を担保にして金融機関などから融資を受けられるサービスを言います。不動産の価値に応じて融資上限額が設定され、定期的もしくは随時融資してもらえます。
返済は、不動産の所有者である親が亡くなった後、不動産を売却し一括返済に充てるのが一般的です。親が売却に同意しないため所有権は手放せないが、老人ホーム代を捻出するための資金調達に同意しているときに有効な手段と言えます。
ただし、融資金額は売却価額の7割以下になる場合がほとんどのため、留意しておきましょう。
リースバックを利用する
老人ホームへの入居後、実家に戻る可能性がある場合に有効なのがリースバックです。
リースバックとは、自宅の売却と同時に賃貸借契約として同じ家に住み続けられるサービスです。資金の調達をしながら今まで通り実家に住むことができます。
所有権を手放す必要があるため、親の同意は必要になりますが、これまでどおり住み続けられるため、親への交渉案のひとつとして有効です。リバースモーゲージとリースバックについて、下記で詳しく確認できます。
リースバックやリバースモーゲージは高リスク?違いやメリット・デメリットについて解説
任意後見制度を利用する
任意後見制度とは、本人の意思能力がなくなる場合に備え、意思能力があるうちにあらかじめ本人自身が後見人を決められる制度です。任意後見契約を締結しておけば、親の判断能力がなくなった場合でも自分が実家の売却活動を行えます。
前述した成年後見制度は、必ずしも自分が後見人になれるわけではありません。裁判所が自分を後見人に選ばなかった場合は、売却活動ができなくなります。それに対して、任意後見人は親の意思で選んでもらえるので、その後を自分の裁量で進められることがメリットです。
親が老人ホームへ入る際の実家売却に伴う注意点3つ
空き家になった実家を売却する際、注意点は3つあります。「売却するかどうかは早めに決める」「親の確定申告をする」「信頼できる不動産屋を選ぶ」について解説します。
1.売却するかどうかは早めに決める
実家を売却して老人ホーム代に充てることを考えているなら、早めに売却を決めることをおすすめします。
売却活動から実際に売却が決まるまでは、時間がかかることが多いもの。決断が遅くなると、なかなか売れず資金が必要なタイミングに準備できないことも考えられます。また、前述したとおり、マイホームを売ったときの3000万円控除は期限があるため、早く売却しておきたいところです。
納得できる売却活動をするためにも、早めに行動するのが良いでしょう。
2.売却したら親の確定申告をする
実家を売却して売却金が入ったら、親の代わりに確定申告を行わなければなりません。親が課税対象となるためです。
逆に、売却による損失が出た場合は、確定申告は義務ではありません。しかし、一定の要件を満たしていれば、その他の所得に課税された税金が還付されることがあるため、確定申告が有効な場合もあります。
損失があっても還付される可能性があるのなら、一度専門家に相談するのもひとつの手段です。
3.信頼できる不動産会社を選ぶ
不動産会社と一言でいっても、得意分野や実績はさまざま。対応する担当者によっても対応が異なります。
納得のいく売買契約をしたいなら、実際に担当者と対面で相談し、信頼がおける不動産会社かどうか自分の目で見極めることが大事です。
住栄都市サービスは、不動産売却の実績や経験、知識が豊富な専門会社です。ぜひ一度ご相談ください。
親が老人ホームに入ったら実家の売却を検討しよう
親が老人ホームに入居し実家が空き家になる場合、実家を売却するのは一つの手です。ただし、親が売却に同意していればスムーズに進められますが、同意がない場合には売却は難しくなります。その場合は、リバースモーゲージやリースバックの利用などを検討しましょう。
いずれにせよ、家を売却し、老人ホームの入居資金に充てることを検討しているなら、早めに決めて売却に向けて動くことが大切です。信頼できる不動産会社に一度相談してみるとよいでしょう。
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1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。