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離婚で不動産売却するときの注意点とタイミングは?売却方法と流れを簡単に解説

2024.01.30

離婚に伴い、家を売却するというケースは少なくありません。離婚後の不動産売却で得た金額は「財産分与」の対象になります。

財産分与の割合は不動産を所有する割合や収入に関係なく半分ずつです。離婚後の不動産売買で気をつけることは4つあります。

この記事では不動産売却するときの注意点やタイミング、売却方法に加え、離婚時の売却のメリット・デメリットを紹介します。

目次

離婚で不動産売却をした場合の割合はどうなる?

離婚で不動産売却をした場合、売却で得たお金は財産分与の対象になり、割合は基本的に半分ずつになります。ただし夫婦間で合意した場合には、割合を変えることも可能です。

まずは離婚で不動産売却をした場合の割合について、詳しく見ていきましょう。

売却して入ったお金は「財産分与」の対象

夫婦で所有している財産は離婚後に財産分与でき、不動産も対象になっています。「財産分与」とは、婚姻中に夫婦で築いた財産を、離婚時に夫婦で分け合うことです。

割合は半分ずつ

基本的に財産分与の割合は、夫婦それぞれ半分ずつになります。土地や一戸建て、マンションなど不動産を売却したお金は、不動産を所有する割合や収入に関係なく半分ずつです。

ただし夫婦間で話し合い、合意した場合は割合を変えられます。例えば夫に全額、妻に全額という割合も可能です。法律上は財産分与の割合は半分ずつとされていますが、強制ではないため、割合を変えても違法にはなりません。

離婚で不動産売却するときの注意点4つ

離婚で不動産売却をするときの注意点は、以下の4つです。

1.親から譲り受けた家は財産分与の対象外
2.住宅ローンが残っている場合はマイナスになる可能性もある
3.不動産売却は名義人しかできない
4.不動産売却は離婚後2年以内にする

それぞれの内容を詳しく解説していきます。

1.親から譲り受けた家は財産分与の対象外

親から婚姻前に譲り受けた家は、夫婦が共同で形成した財産にならないので、財産分与の対象外になります。

婚姻前にあった財産を「特有財産」と呼び、婚姻前に親から譲り受けた家もこれに該当します。

ただし、婚姻前であっても財産分与の対象になるケースがあるため、注意が必要です。

例えば、夫婦のどちらかが婚姻前に不動産を購入していて、婚姻後も住宅ローンを払っている場合には、婚姻後にローンを支払った部分が共有財産にあたるため、財産分与の対象になります。

この場合、婚姻後に2人で支払ったローンはいくらなのかを確認し、その割合から共有財産を計算する流れです。

2.住宅ローンが残っている場合はマイナスになる可能性もある

売却の金額よりも住宅ローンの残額の方が上回る場合、財産分与できないだけでなく、足りない分の金額を支払うのでマイナスになります。

不動産を売買するときに住宅ローンが残っている場合は、アンダーローンとオーバーローンのどちらかになるため確認が必要です。アンダーローンとは、売却した金額が住宅ローンの残額を上回ることを指します。

一方オーバーローンとは、売却した金額が住宅ローンの残額を下回ることです。足りない金額を支払えない場合は、無担保で組めるローンを利用する方法もあります。

売却後も残った住宅ローンは完済しなければならないため、注意しましょう。

3.不動産売却は名義人しかできない

不動産の売却は名義人しかできないのも注意点のひとつです。不動産の名義人は不動産売買契約書で確認できます。

名義が夫のみの場合は、夫の承諾なしには売却できず、逆も同様です。夫婦で共有名義の場合は、夫婦共同でなければ基本的には売却できません。

夫婦で売却の意志が一致しない場合、自分の持分のみを不動産会社など第三者に売却できます。この場合、家の半分を第三者が保有することになるため、夫婦間でトラブルになる可能性があります。

また、自分の持分のみの売却なので金額も安くなり、あまりおすすめできません。

4.不動産売却は離婚後2年以内にする

不動産売却は離婚後2年以内に行うようにしましょう。なぜなら財産分与は、離婚から2年以上経つと請求権が失効してしまうからです。

また、離婚後に名義人と連絡が取れなくなると請求権を失効して財産分与してもらえなくなるリスクがあります。

そのため売却は離婚前にしておき、離婚協議書を作成するときは、証明力と執行力のある公証人が作成する「公正証書」で作成して財産分与の内容を明確にしておくと良いでしょう。

不動産売却のタイミングは離婚前?それとも離婚後?

不動産売却のタイミングは離婚前がおすすめですが、財産分与は離婚後にすると良いといわれています。

ここでは、不動産売却と財産分与に適したタイミングと、その理由について見ていきましょう。

売却は離婚前がおすすめ

不動産の売却を決めたら、離婚前に売却するのがおすすめです。なぜなら、離婚前の方が相手と連絡が取りやすいからです。

また不動産の売却活動は最低でも3ヵ月程度はかかります。そのため、離婚後に連絡を取りたくない人にとっても、離婚前の売却が最適なタイミングといえるでしょう。

特に、夫婦共有名義なら離婚する前の方が売却しやすいといえます。

離婚前に離婚協議書を作成して、分配に関する詳細を話し合っておくと離婚後スムーズに事が進められるのでおすすめです。

財産分与は離婚後にする

婚姻中の財産の移転は「贈与」と見なされ、「贈与税」や「不動産取得税」がかかる可能性があります。このような課税を避けるため、財産分与は離婚後にすると良いでしょう。

税金がかかるのを防ぐためには、離婚届を出したあとに財産分与するのがおすすめです。

オーバーローンの場合で「任意売却」するなら不動産の財産分与は発生しないため、離婚前でも離婚後でも問題ありません。

離婚で不動産売却するときの方法4つ

離婚で不動産売却するときには、次の4つの方法があります。

1.不動産会社に仲介を依頼する
2.不動産会社に売却する
3.任意売却する
4.リースバックする

それぞれの方法について、詳しく解説します!

1.不動産会社に仲介を依頼する

ひとつ目は不動産会社に仲介を依頼して買主を探す方法です。不動産会社に仲介を依頼すると、相場に近い金額で不動産を売却できるメリットがあります。

一方で、売却活動の期間が長くなる傾向にあります。そのため、多少期間が長くなっても高値で売りたい人におすすめです。

また、オーバーローンで「任意売却」する場合は、不動産会社への仲介は依頼できません。(※任意売却については、3つめの方法「任意売却する」で詳しく解説します。)

住宅ローンが残っている場合は、売却する金額で一括返済できるかを確認する必要があります。

2.不動産会社に売却する

早急に不動産を売りたい人や、売却を近隣の人に知られたくない場合は不動産会社に売却する「買取」と呼ばれる方法がおすすめです。

買取の場合、売却金額が相場に比べて50%〜70%以上と低くなりますが、売却まで1ヵ月以内の短期間で終えられます。

不動産会社に直接売却する場合も仲介同様、住宅ローンが残っている際に売却金額で一括返済できるかを確認しましょう。

3.任意売却する

オーバーローンで売却後に住宅ローンを支払えない場合は、任意売却という方法があります。住宅ローンを組むと、金融機関が「抵当権」という土地と建物に対する権利を設定します。

抵当権があると不動産を売却できないうえ、住宅ローンの支払いが滞ると差し押さえられてしまうことがあります。

しかし、金融機関がローン残額の回収可能性等を考慮して任意売却を了承してくれる場合には抵当権を解除してもらうことができ、不動産を売却できます。

また、市場に近い金額で不動産を売却できる可能性が高いのもポイントです。ただし、任意売却を行う場合は信用情報に残るため、検討は慎重に行いましょう。

4.リースバックする

「離婚する相手との関係は清算したいけれど、今の居住場所を変えたくない」という人はリースバックがおすすめです。

リースバックとは、不動産会社やファイナンス会社などに不動産を売却したあと、賃貸契約をして家賃を払って今の家に継続して住む方法を指します。

リースバックの場合、早く売却できますが相場より買取金額が低くなる傾向にあります。また、住宅ローンを完済する必要があるので注意が必要です。

リースバックする場合は、いくらで売れるのか、また家賃いくらで借りられていつまで住めるのかなどを確認しておきましょう。

離婚時の不動産売却のメリット3つ

離婚時に不動産売却をするメリットは主に3つあります。

1. 財産分与が公平にできる
2. 離婚後の面倒なやり取りをしなくて良い
3. 不動産の維持費がかからない

これらのメリットについて、詳しく見ていきましょう。

1.財産分与が公平にできる

離婚時に不動産売却をすると、財産分与が公平にできるのがメリットです。不動産は財産分与しにくく、均等にしにくいためトラブルになりやすい傾向があります。

しかし、売却して現金化することで、財産分与が公平に分配できるのです。また、住宅ローンが残っている場合でも、売却金額で完済できれば、どちらかにローン返済の負担がかかるといった問題もありません。

2.離婚後の面倒なやり取りをしなくて良い

住宅ローンの保証人が相手方である場合や共有名義の場合は、不動産を所有している限り、関係を断ち切るのは難しいといえます。

家をもらう、買取るなどしても住宅ローンが残っている場合は、注意が必要です。

また、住み続ける側が住宅ローンの名義人でない場合は、ローンが停滞するリスクもあります。そのリスクを避けるために名義を変更したいところですが、住宅ローンは高額な借金のため、名義変更は難しいとされています。なぜなら借入し直すにしても、審査が通りにくいなどの問題があるからです。

離婚時に売却して財産分与した方が手間を省け、支払いの停滞などのトラブルも回避できます。離婚後に関係を断ち切りたい場合は売却するのがおすすめです。

3.不動産の維持費がかからない

離婚時に不動産売却をすると、不動産の維持費がかからないのも大きなメリットです。不動産を所有している限り、修繕費や固定資産税などの維持費はかかってしまいます。

毎年の固定資産税や設備の修繕費など、維持費が負担になってしまう場合もあるでしょう。売却することで維持費の心配はなくなり、負担が軽減されるのは良い点です。

離婚時の不動産売却のデメリット2つ

離婚時の不動産売却にはメリットだけでなく、以下のようなデメリットも発生します。

・家を引っ越さなければいけない
・売却しても債務が残る可能性がある

ここでは、離婚時の不動産売却のデメリットについて確認していきましょう。

家を引っ越さなければいけない

不動産売却すると家を引っ越さないといけません。新たに賃貸を借りる場合に、敷金礼金がかかったり、引越し費用がかかったりと何かとお金がかかります。

住居が変わると通勤時間が長くなる可能性があるほか、子どもの学校校区が変わり転校しないといけなくなる可能性も高いでしょう。

このような問題は、同じ地域に引っ越すことで解決できます。離婚するときは、生活資金と生活の拠点についても考えておく必要があるでしょう。

売却しても債務が残る場合がある

売却しても住宅ローンの残額の方が上回った場合、オーバーローンになり債務が残る場合があるのもデメリットです。

不動産を持っていないのに毎月ローンを支払うのは、経済的にも精神的にも大きな負担になります。売却時にオーバーローンになるなら、家を売らない方が良いケースも考えられるでしょう。

不動産売却の流れ

不動産売却の流れは、以下のように6つのステップで進めていきます。

1. 不動産会社に査定の依頼をする
2. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
3. 不動産会社が売却活動をする
4. 買主と売買契約を結ぶ
5. 売買代金の受け取りと不動産の引き渡しをする
6. 確定申告をする

具体的にどのような流れになっているのか、確認していきましょう。

1.不動産会社に査定の依頼をする

まずは不動産会社に査定を依頼します。不動産会社によっては価格が変動するので、複数の会社に依頼して検討すると良いでしょう。

不動産を売却することが決まったら訪問査定をしてもらいます。不動産の現状を確認してもらうため、立ち合いが必要です。その際には以下の書類を用意しておくことをおすすめします。

・登記簿謄本(登記済権利証・登記事項証明書・登記識別情報)
・公図、測量図、建物の図面など
・身分証明書

必要書類は不動産会社によって異なる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

2.不動産会社と媒介契約を結ぶ

複数の中から選んだ不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約とは、不動産売却の際に仲介を依頼する不動産会社と結ぶ契約のことです。

媒介契約には「専任媒介契約・専属専任媒介契約・一般媒介契約」の3種類あり、それぞれ条件や契約期限などが異なります。

以下の表は、3種類の媒介契約を比較したものです。

専任媒介契約 専属専任媒介契約 一般媒介契約
依頼できる不動産の数 一社のみ 一社のみ 複数可能
自分で買い手を見つけること 可能 制限あり 可能
販売活動の報告頻度 2週間に1回程度 1週間に1回程度 報告しなくても良い
契約有効期限 3ヵ月以内 3ヵ月以内 期限なし

媒介契約書には売却成立時の不動産会社への報酬額や、売却活動の方向性などが記載されています。

需要の高いエリアであり、時間をかけてでも良い条件で売却したい場合は、一般媒介契約がおすすめですが、短期間で売却したいなら専任媒介契約か専属専任媒介契約がおすすめです。

3.不動産会社が売却活動をする

媒介契約後、不動産会社が不動産の売却活動を開始します。基本的に不動産会社主導で売却活動が進むため、お任せして問題ありません。

不動産会社は購入の申し込みを受けたり、買主への物件案内や説明、条件交渉などを行ったりしながら売却活動を進めていきます。

不動産会社や買主からの問い合わせが合った際には、迅速に対応するのがベストです。

4.買主と売買契約を結ぶ

買主が見つかったら、不動産会社が「買主の住宅ローン事前審査」と「物件の最終調査」を行い、売買契約に進みます。

売買契約は、売主、売主側の仲介業者、買主、買主側の仲介業者が立ち合いのもと、売主側が仲介を依頼している不動産会社の事務所で行うのが一般的です。

売買契約の際、売主は以下の必要書類を準備しておきましょう。

・実印・認印
・身分証明書
・印鑑証明書(3ヵ月以内のもの)
・登記済権利証
・収入印紙

上記の必要書類のほか、不動産会社に支払う仲介手数料の準備も必要です。仲介手数料は売買契約時に半金が一般的ですが、媒介契約によっては売買契約時に全額支払う場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

宅地建物取引士の同席のもと、重要事項説明の読み合わせを行い、売買契約書を締結します。契約書に署名、押印、本人確認をしたあと、手付金の授受を行う流れです。

さらに書類内容に合意後、売主と買主双方の契約書へ署名、押印をします。契約後は印紙が貼られた契約書を売主と買主に一部ずつ渡されるのが基本的な売買契約の流れです。

5.売買代金の受け取りと不動産の引き渡しをする

売買代金の受け取り後、不動産の引き渡しが行われます。住宅ローンの返済が残っている場合は、売買代金の受け取り前に金融機関に連絡して、抵当権抹消書類の準備を依頼しておきましょう。

そして売買代金を受け取ると同時に、住宅ローンを返済します。不動産会社に仲介手数料、司法書士に登記費用などの決済を済ませ、その日のうちに引き渡しを行います。

そこで忘れてはならないのが、引き渡しの前に土地の確定測量を行うことです。これは売却する不動産の範囲を決めるために、隣地との境界や土地の面積を確定する目的で行います。

確定測量には費用が発生するため、売買代金を受け取るタイミングで実施するのが適切です。

6.確定申告をする

売却した年の翌年、2月中旬~3月中旬までに確定申告をします。不動産売却で利益が出た場合、確定申告をして納税することになります。

また、売却したときに利益が出ず、損失した場合でも損失を軽減できる制度もあるため、確定申告は必ず行った方が良いでしょう。

確定申告に必要な書類は、以下の通りです。

・住民票(区役所・市役所などで入手)
・建物、土地の登記事項証明書(法務局で入手)
・源泉徴収票(会社・職場で入手)
・確定申告書、計算明細書(税務署で入手)
・不動産売買契約書のコピー

税務署で手続きを終えたら、不動産売却はすべて完了です。

不動産売却におけるスケジュールは、以下の記事で詳しく解説しています。

不動産売却のスケジュールと期間|具体的な流れや短くするコツも解説

離婚後のトラブルを防ぐためにも不動産売却は計画的に

離婚後の不動産売却で得た金額は財産分与の対象になり、割合は収入に関係なく半分ずつになります。

ただし、親から譲り受けた家は財産分与の対象外となるほか、名義人しか売却できないなどの注意点には十分気をつけましょう。

不動産売却は離婚前、財産分与は離婚後が最適なタイミングです。メリットやデメリットも理解し、離婚後のトラブルを防ぐためにも不動産売却は計画的に行っていきましょう。

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監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一 弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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