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持ち家に離婚後も妻が住むのはリスクが高い?リスク回避の方法も併せてチェック

2024.03.12

持ち家に離婚後も妻が住む場合、夫が名義人のまま住み続けるにはリスクがあります。夫が勝手に家を売却するリスクや、住宅ローンの支払いが滞る可能性があるためです。

持ち家に離婚後もリスクなく妻が住むには、名義変更などいくつか方法があります。この記事では、妻が離婚後も持ち家に住むための方法について詳しく紹介します。

持ち家に離婚後も妻が住むのはリスクがある?

離婚後、妻が持ち家に住むには、2つのリスクが考えられます。

1つ目は、夫が持ち家の所有名義人の場合です。所有名義人とは、登記簿に名前が記載されている所有者のことです。

2つ目は、夫が住宅ローン名義人であり、住宅ローンを払い終わっていない場合です。住宅ローン名義人とは、金融機関と契約しローンの返済義務を負った人のことです。

詳しくは、「持ち家に離婚後も妻が住むデメリット3つ」の章で説明します。

持ち家に離婚後も妻が住むメリット3つ

離婚後、妻が持ち家に住むメリットは、環境面、手間、金銭的負担の3つです。以下で詳しく説明します。

環境を変えなくていい

持ち家に住み続けられれば、離婚後も同じ環境で生活できます。

これは、未成年の子どもがいる場合は、特に大きな利点です。子どもが保育園や小学校などに通っている場合、引越しに伴い転校する必要があります。

仲良しの友だちとも離れてしまい、また一から新たな人間関係を築くことを余儀なくされるため、少なからず子どもの心に負担がかかります。

離婚後も同じ家に住み続けることで、ライフスタイルを大幅に変更する必要がありません。

賃貸物件探しや手続きの手間が省ける

引越しにまつわる手続きや手間が省けるのもメリットの一つです。

引越しをするとなると、不動産屋を回ったり賃貸契約の手続きをしたりと大変なもの。無事引越し先が決まってからも、引越し業者の選定や転出・転入手続き、家具や家電の購入など、大忙しです。

さらに、子どもがいる場合は、転園先探しや、転園・転校手続きも必要です。持ち家にそのまま住み続けられれば、これらの手間をすべて省けます。

金銭的な負担が軽くなる

引越す場合、不動産屋に支払う初期費用や引越し費用、毎月の家賃などがかかります。さらに、カーテンや照明、各種家電など、生活に必要なものの買い足しも必要です。

このような引越し費用に比べれば、持ち家に住んでローンを払った方が金銭的負担が抑えられます。ローンの残債にもよりますが、条件が同等の賃貸物件と持ち家を比較した場合、毎月の住宅ローン返済額の方が、賃貸物件の家賃より安くなることが一般的だからです。

持ち家に離婚後も妻が住むデメリット3つ

前述した通り、夫が「所有名義人」もしくは「支払い終えていない家のローン名義人」である家に、妻が住むのはデメリットがあります。以下で詳しく解説します。

売却・管理を勝手にできない

夫が家の所有名義人である場合、妻は家の売却や、管理行為ができません。所有名義人だけがその権利を持っているからです。

そのため、夫の判断で勝手に家を売却したり貸し出されたりすることもあり得ます。その場合、妻や子どもは、突然家を追い出されることになります。夫が所有する家に住むということは、突然に居住できなくなるリスクを常に負うことと同義なのです。

住宅ローンの返済が滞る可能性がある

夫がローン名義人で、且つローンを支払い終えていない場合、返済が滞る可能性があります。ローンを滞納し続けた場合、抵当権を有する債権者(銀行)によって持ち家を差し押さえられ、強制的に競売にかけられます。そして最終的には強制的に家を追い出されることになるのです。

尚、妻がローンの連帯保証人である場合、契約者と同等の義務として妻にも支払いを求められる場合があるので、注意が必要です。

母子手当がもらえない場合がある

夫がローンの支払いをしている家に住んでいると、母子手当(児童扶養手当)がもらえない可能性があります。

これは、児童扶養手当には所得制限があり、一定以上の所得があると、支給がストップもしくは減額されるためです。妻が住んでいる家のローンを夫が支払うことは「家賃相当額を夫に支払ってもらっている」とみなされ、所得に換算される可能性があるのです。

ただし、すべてのケースであてはまる訳ではないため、まずは住んでいる自治体に確認すると良いでしょう。

持ち家に離婚後もリスクなく妻が住む方法

妻が持ち家にリスクなく住むための方法を5つ紹介します。住宅ローンが残っていない場合は「持ち家の名義変更」「代償金支払い」を、夫名義の住宅ローンが残っている場合は「名義借り換え」「両親に引き継ぐ」で説明しています。

夫名義のままローンを支払い続ける場合は「公正証書の作成」が参考になるでしょう。

持ち家の妻の名義を変更する

住宅ローンが残っていない場合は、財産分与で妻が持ち家をもらい、名義変更する方法があります。財産分与とは、婚姻期間に夫婦で形成した共有財産を離婚時に分け合う制度です。婚姻後に夫名義で購入した家も共有財産として扱われるため、財産分与の対象になります。

財産分与は半分ずつ分けるのが基本ですが、お互い合意の上ならどのような割合でも問題ありません。また、妻が家をもらう代わりに、預金や保険など他の共有財産は夫がもらうなどして、財産分配のバランスを取るのも方法の一つです。

妻が代償金を支払う

住宅ローンを完済している場合、妻が代償金を支払って持ち家全体の権利を取得する方法もあります。代償金を支払う方法で土地建物の所有名義人となることで将来のトラブルを防げるメリットがあります。

持ち家などの財産は物理的に分割できないため、取得する側が取得していない側に対し代償金を支払うことで公平性が保てます。代償金は、持ち家の時価の半額が一般的です。

住宅ローンを妻名義で借り換える

住宅ローンが残っており、夫が返済している場合は、夫から妻に返済義務を移せればリスクを下げられます。

住宅ローンを借り換える方法は「免責的債務引受」と「夫婦間売買」があります。

免責的債務引受 銀行の承諾の上で妻がローンを引き継ぐ
夫婦間売買 夫婦間で不動産売買し、妻が住宅ローンの審査を受けて買い取る

ただし、これらは妻に十分な収入がある場合に限ります。なぜなら、いずれの方法も妻に夫と同等の経済力がなければ金融機関の承認が降りないためです。妻がローン審査に通らなかった場合は、以下「妻の両親に住宅ローンを引き継ぐ」方法を検討すると良いでしょう。

妻の両親に住宅ローンを引き継ぐ

ローンが残っていて夫が返済中の場合、妻の両親など収入が安定している人に依頼して住宅ローンを引き継ぐ方法もあります。

住宅ローンは利用者本人が住むために設けられているため、基本的に1世帯で1件のみしか組めませんが、専用の住宅ローンを利用すれば2件目のローンを組むこともできます。

公正証書を作成する

やむなく夫がローン名義人のまま住宅ローンを支払い続ける場合は、必ずローン返済するよう取り決めをかわし、公正証書を作成しましょう。

公正証書とは、法律や権利について強い効力と証明力を持つ証書のことです。法務省の公証人に依頼し、公正証書を作成しておけば、夫が取り決めを破った場合に法的な措置を行うことができます。

公正証書には、夫が住宅ローンを返済することや、完済後所有名義人を妻に変更することを記載してもらうと良いでしょう。ただし、名義変更は公正証書に記載があっても強制執行はできません。そのため、リスクが無くなる訳ではないので注意が必要です。

家を売却する方法もある

家を持ったまま妻が住み続ける方法のほかに、家を売却する方法もあります。住宅ローンを完済している場合、ローンが残っている場合に分けて説明します。

住宅ローンを完済している場合

住宅ローンを完済していれば、問題なく持ち家を売却できます。売却額は財産分与の対象として、夫婦で分け合う形になります。

前述した通り基本的に夫婦で形成した財産は、半分ずつが基本です。お互いの合意があれば、割合を変えることもできます。これは不動産の所有割合や収入に関係なく決められます。

住宅ローンが残っている持ち家を売却する場合

住宅ローンが残っている持ち家を売却する場合は、住宅ローンの残高が売却額より高いか低いかで対応が変わります。

持ち家の売却額が住宅ローンの残高を上回る場合(アンダーローン)
家を売却して得たお金で、ローンの残額を支払います。手元に残った残金は、財産分与として分けるのが一般的です。

持ち家の売却額が住宅ローンの残高を下回る場合(オーバーローン)
住宅ローンが残っている家は、原則ローンを一括返済しなければ売却できません。この打開策として以下2つの方法があります。

フリーローンを組む フリーローンでオーバーローン分を借り入れ、ローン返済に充てる。
任意売却する 金融機関の許可を得て家を売却すること。
信用情報に傷がついてしまうのが難点。

詳しくは以下の記事を参照してください。
離婚で不動産売却するときの注意点とタイミングは?売却方法と流れを簡単に解説

売却後も持ち家に住み続ける方法

「持ち家を売却したいけど住み続けたい」という人には、リースバックという方法がおすすめです。

リースバックとは、不動産会社やファイナンス会社に家を売却した後、賃貸契約を結ぶことです。一度売却するため、まとまったお金が手元に入ります。

ただし、売却価格が安い傾向があること、賃貸契約なので毎月家賃の支払いが発生することなど、注意点もあるためよく検討するようにしましょう。

持ち家に離婚後も妻が住むならリスクを回避しよう

離婚後、夫が名義人の持ち家に妻が住み続けるのはリスクがあります。夫が家の名義人の場合は、勝手に家を売却される可能性があるためです。また、夫がローン名義人の場合は住宅ローンを延滞することも考えられます。

持ち家の名義変更をすれば安心ですが、簡単に名義変更できない場合は、両親に協力を仰ぐ、公正証書を作成するなど対策が必要です。また、不動産売却やリースバックするなども方法の一つです。安心して暮らし続けられるよう、打てる対策は打っておくようにしましょう。

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監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一 弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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