離婚時に家の査定が必要な理由は、家が財産分与の対象であることからトラブルなく財産分与を行うためです。
主に家を売却して夫婦で売却金を分け合う場合や、どちらかが家に住み続けるといった2つのケースで査定します。
この記事では、離婚時に家の査定をした方がいい理由や査定が必要な2つのケースについて、また査定の依頼先や注意点も併せて解説します。
目次
離婚時は家の査定をした方がいい理由
離婚時には家の査定をした方がいいといわれています。その理由は、所有している家は財産分与する必要があるからです。
財産分与とは、夫婦が共同生活の中で築き上げた財産を公平に分け合うことを指します。結婚後に購入した家は、夫婦で築き上げた財産であるため、離婚時における財産分与の対象です。
トラブルなく均等に財産を分け合うためには、査定をして家の価値を知る必要があります。
離婚時に家を査定する2つのケース
離婚時に家を査定するケースは、主に以下の2つがあります。
1.家を売却して売却金を分け合う
2.どちらかが家に住み続ける
2つのケースについて詳しく見ていきましょう。
ケース1.家を売却して売却金を分け合う
1つ目は家を売却して売却金を分けるケースです。
財産分与する方法のひとつに、家を売却したあと売却金を夫婦で分けるというシンプルな方法があります。この場合家を売却するために査定が必要です。
家を査定してもらい、提示された査定額をもとに売り出し価格を決めていきます。
査定で正確な家の価値を知ることで、売却価格の設定や交渉に役立ちます。売却金は財産分与する上で重要な要素になるため、査定は必須といえるでしょう。
ケース2.どちらかが家に住み続ける
2つ目は夫婦のどちらかが家に住み続けるケースです。均等に財産分与するには、家の査定をしてもらう必要があります。
この場合における財産分与は、住み続ける方が家を出ていく方に家の評価額の半額を支払うという方法です。
家を出ていく方に支払う金額を正しく決めるためにも、家の査定が必須になります。
離婚時は家をどうする?2つの方法とメリット・デメリット
離婚時は家をどうするべきなのか、悩む人も少なくありません。離婚時は主に「家を売却する場合」と「家に住み続ける場合」の、2つの方法があります。どちらの方法もメリット・デメリットが生じるため、事前に理解しておくことが大切です。
ここでは家を売却する場合と家に住み続ける場合の、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
1.家を売却する場合
まずは家を売却する場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
・離婚後のトラブルが防げる
・公平に財産分与できる
・現金化できる
デメリット
・家が売却できない可能性もある
・購入時よりもかなり低い価格で売却となる場合もある
家を売却する場合はローンを完済させる必要があるため、後に金銭面でのトラブルを防げるのがメリットです。現金で公平に財産分与できるため、得た資金を新生活にあてられます。
一方デメリットは、ローンが完済できないなどの理由で、家が売却できない可能性もあることです。また、不動産価値の変動によって購入時よりも低い価格での売却になる場合もあります。
2.家に住み続ける場合
次に、家に住み続ける場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
・住んでいる環境を変えなくていい
デメリット
・名義人でない人が住んだ場合、名義人がローンの滞納をしたときに強制的に退去となる可能性がある
家に住み続ける場合、大きく環境を変えずに生活できるのがメリットです。職場が遠くなったり子どもが転校したりする必要もありません。
一方デメリットは、名義人でない方が住んだ場合、ローンの滞納で強制退去の可能性があることです。
このような事態を防ぐために、ローンをきちんと払ってもらえるような取り決めをしておく必要があります。離婚調停を行ったときは調停調書に記載し、調停外で話し合いしたときは公正証書を作成しておくと良いでしょう。
離婚時に家を査定するときの依頼先2つ
離婚時に家を査定するときはどこに頼むべきか悩んでしまうかもしれません。依頼先は以下の2つになります。
・不動産会社
・不動産鑑定士
それぞれ査定にどのような特徴があるのか、また状況に応じてどちらの依頼が向いているのか、確認していきましょう。
1.不動産会社
1つ目は不動産会社に無料査定を依頼する方法です。無料査定では、机上査定と訪問査定の2種類あり、手軽に査定してもらえますが精度は低いといえます。
机上査定は過去の取引や物件の築年数、立地条件などのデータを参考に査定します。匿名査定もあり、個人情報の入力が不要で手軽に相場を知れるのが良い点です。
ただし現地調査をしないため、正確性は劣ります。査定結果は当日~3日程度と早い点が特徴です。
一方、訪問査定とは不動産会社が訪問して現地調査を行った上で査定します。
実際に物件と周辺状況を確認するため、机上査定よりも売却価格に近い査定になります。査定結果が出るのは4~7日程度です。
売却を検討している段階なら机上査定、売却を決めている人は訪問査定をしてもらうと良いでしょう。
2.不動産鑑定士
2つ目は国家資格を持った不動産鑑定士が査定する方法です。不動産会社の査定と比べ、より細かく査定が受けられる特徴があります。
ただし、不動産会社のような無料査定ではなく約20万~30万円の費用が発生するため注意が必要です。とはいえ、適正な不動産の価値がわかるため、より正確に財産分与を行えます。
どちらかが家に住み続ける場合には、不動産鑑定士への依頼がおすすめです。
離婚時に家を査定するときの注意点4つ
離婚時に家を査定するときの注意点は以下の4つです。
1.査定額は実際の売却額ではない
2.財産分与が対象外の不動産もある
3.ペアローンの場合は2人の合意がなければ売却できない
4.一括査定はデメリットもある
4つの注意点を詳しく解説していきます。
1.査定額は実際の売却額ではない
家の査定額はあくまで目安であり、実際の売却額ではないので注意しましょう。
なぜなら不動産は築年数や時勢と市況、立地とエリア需要などで変動するからです。
売却する時期によっても価格が変動するため、査定額で売却できるわけではないと覚えておきましょう。
2.財産分与が対象外の不動産もある
財産分与が対象外の不動産もあるので注意が必要です。例えば、結婚する前に取得した家や親から相続した土地は夫婦が協力して築き上げた財産ではないため、財産分与の対象外になります。
また、親名義の土地に家を建てた場合、土地と家を切り離して財産分与しなければなりません。その場合は主に以下の3つのパターンで財産分与を行います。
・義親の土地に建てた家に義理の息子または娘が住み続ける
・実親の土地に建てた家に実子が住み続ける
・借地権付き不動産(名義人が地代を支払っている場合)として家のみ売却する
このように親名義の土地に家を建てている場合、権利関係がややこしくなり財産分与が難しくなります。
3.ペアローンの場合は2人の合意がなければ売却できない
夫婦でローンを組むペアローンの場合は、2人の合意がないと売却できないため注意しましょう。
ペアローンはお互いが連帯保証人となり、不動産も共有名義の場合が多いからです。そのためどちらかが支払いを滞納したときには、片方に催促の連絡が来る場合があります。
また、離婚後に売却の手続きを始めた場合、話し合いや手続きの対応など、何かと一緒に行わなければなりません。
ペアローンを組んでいる場合は、離婚前にローンについて話し合い、解決しておいた方が
良いでしょう。
4.一括査定はデメリットもある
複数の不動産会社が出す物件の査定額を一度に比較できる「一括査定」は、デメリットがあるので注意が必要です。
例えば、複数の不動産会社から連絡が来て電話対応に追われたり、不動産会社を選ぶのに迷ったりするデメリットが挙げられます。
また、住んでいる地域がエリア対象外の場合は一括査定できないこともあるため、確認が必要です。
不動産一括査定の4つのデメリットとは?注意点や選ぶポイントも解説
離婚時に家を売却する場合に知っておきたいこと
離婚時に家を売却する場合に知っておきたいことは、以下の2つです。
・売却するときの方法
・住宅ローンが残っている場合も売却可能
それぞれの内容を確認していきましょう。
売却するときの方法は2つ
売却するときは主に「仲介」と「買取」の2つの方法があります。仲介とは、買主と売主の間に不動産会社が入り、仲介役となって不動産取引を行う方法です。
一方、買取とは不動産会社が売主から直接不動産を買い取る方法を指します。仲介の場合は、売主から依頼を受けた不動産会社が、買主を探すために販売活動を行う点が買取との違いです。
仲介は手数料がかかるほか、買主を探す必要があるため、短期間での売却が難しいといえます。しかし、買取よりも高く売却できる可能性が高いです。
買取は不動産会社の利益が出る仕組みのため、相場価格の6〜8割程度になることもありますが、短期間で売却できます。
数日から数週間で成立することもあるため、早めに住み替えの資金計画を立てたい人におすすめです。
住宅ローンが残っている場合も売却できる
住宅ローンが残っている場合も、一定の条件を満たすことで不動産を売却できます。
その条件とは、住宅ローンを完済し、抵当権を抹消することです。住宅ローンを完済するには、まず残高証明書や返済予定表などで住宅ローンの残債を確認します。
家の売却見込価格を調べ、その資金で住宅ローンを完済できるか確認しましょう。住宅ローンの残債が売却見込価格よりも下回っていることを「アンダーローン」といい、住宅ローンの完済が可能です。
反対に、住宅ローンの残債が売却見込価格よりも上回っていることを「オーバーローン」といいます。この場合、売却代金だけではローンを完済できないため、手持ちの資金を足すか、住み替えローンで返済するか、あるいは任意売却をしなければなりません。
任意売却とは、住宅ローンの返済が難しい場合に借入れをしている金融機関に了承を得て、一般市場で売却をすることです。
任意売却によって差し押さえなどの強制的な売却は防げますが、一定期間融資を受けられなくなるなど信用状況に影響するため、あまりおすすめできません。
離婚時は家の査定をしてトラブルを防ごう
結婚後に購入した家は夫婦で築き上げた財産に当たるため、離婚時には財産分与の対象になります。
トラブルなく財産分与するためにも、家の査定は必須です。離婚後に家の売却を考えている場合は不動産会社に依頼し、どちらかが住み続ける場合は不動産鑑定士に依頼することをおすすめします。
査定する際の注意点も確認し、夫婦で良く話し合っておきましょう。
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1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。